合言葉は「みんな同じマイナス」!?チームでうまくやっていくために理解するべき「本当のリーダー」の役目
リーダーの本当の役目
逆の場合もあるだろう。毎年1回戦で負けることが伝統(? )になっているチームで、「全国大会で優勝したい!」と猛烈に決意したキャプテンが現れた、なんて場合だ。 マンガとかアニメの設定にありそうだけど、これも、「一番大切なこと」が何かは、対話して、みんなが納得するものを選ぶことが大切なんだ。 みんなが「勝つことよりスポーツを楽しみたい。自分の自由時間も大切にしたいし、勉強と両立したい」と対話して結論したら、熱血キャプテンは、それに対応するんだ。 こういう時の対処方法はもう書いたね。 そう、「みんなが同じマイナスを引き受ける」。自分が考えた強引な練習メニューの代わりに、「それぞれが同じぐらいのマイナス」を引き受けた練習メニューを提案するんだ。 それは、熱血キャプテンからすれば「物足りないもの」で、他のメンバーからすると、「ちょっとがんばりすぎているもの」になるだろう。 マンガやアニメだと、「初めて勝利した後、勝つ喜びを知って、みんな熱心に練習を始める」なんてパターンがあるけど、そうなるとは限らないよね。 「勝ったけど、こんなに練習しないといけないんだったら、自分の時間がなくなるからやめるよ」となることだってあるだろう。 そうなったら、部員がやめないためにはどれぐらいの練習量がいいのか、それは、勝つための練習量とどれぐらい違うのかを話し合うんだ。 確認するよ。 どんな練習をどれぐらいやればいいかは、みんなが納得する「一番大切なこと」によって決まってくる。 それは、リーダーの君が頭の中で決めることではなく、部員みんなで対話して明確にすることなんだ。 「リーダーであること」に慣れてない人は、とにかく「自分が結論を出さないといけない」「自分がみんなを引っぱらないといけない」と思い込んでるんだよね。 でもね、「本当のリーダーの役目」は、意見をまとめたり決める前に、「情報を流通させること」なんだ。 ファシリテーターということだね。 「一番大切なこと」が決まれば、そこから練習メニューをみんなで検討する。 もちろん、簡単には結論は出ないよ。一歩一歩、議論したり、実際にやってみたりしながら(君とAさんとBさんの提案を交互に、とか)、そのたびに対話するんだ。 『5歳の子供が「ブランコ」をめぐって熱い話し合い…イギリス人の対話力を育てる衝撃の「価値観」とは』へ続く
鴻上 尚史
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