西武特急ラビュー5年、新旧車両を乗り比べた「大違い」は?
ラビューが走り出すと、次なる大違いを実感した。乗ったのは主電動機(モーター)を搭載した車両なのに、実に静かなのだ。対照的だったのは私が乗ったNRAで、「爆音モーター」と呼ばれる大きな音を奏でるモーターと、「抵抗制御」と呼ばれる旧式の制御装置を積んだ編成だった。 鉄道ファンとしては「爆音」をBGMのように楽しんでしまうのだが、一般の利用者には会話や睡眠の妨げにならない静かな走行機器が好まれよう。ラビューはNRAに比べて年間消費電力量を約6割低減した省エネルギー化も売りだ。 省エネ化では、ラビューで小手指車両基地(所沢市)を通った際に〝切り札〟となる電車が止まっているのを見つけた。省エネ化した制御装置「VVVFインバーター」を採用した旧小田急電鉄8000形だ。西武は小田急から8000形、東急電鉄から9000系を計約100両譲り受けて旧型車両から順次切り替え、2030年度にはVVVFインバーター搭載車両に統一する計画だ。
切り替えと言えば、池袋線の電車は飯能で進行方向が変わる。だが、飯能―西武秩父間ではいすが進行方向とは反対を向いたまま座る。一方、JR九州の主に博多(福岡市)―大分間を走る特急「ソニック」が途中の小倉(北九州市)で進行方向が変わる際には、いすの向きも変えるのが通例だ。ソニックでは乗客同士が協力して座席を回転させる光景が見られ、「ラビューも見習えばいいのに」と思ってしまう。 飯能を出ると秩父山地へ向かう勾配区間に入るが、高性能モーターを搭載したラビューは順調だ。それだけに「臨時停車駅の高麗に停車する自動アナウンスが用意されているのだろうか」という細かい点が気になった。 「心配ご無用」。そう言わんばかりに、「間もなく高麗、高麗に到着いたします」という久野さんの美声が車内に響いた。 池袋を出発して49分後、定刻通りに高麗のホームに降り立った。デザインと居住性、走行性能、省エネのいずれも車体色のように輝きを放っているラビューでの移動体験は、期待を大きく上回った。武蔵丘車両研修場の公開では運行開始5年を記念したキャラクター「らびゅーくん」も披露され、子どもたちの熱い視線を浴びていた。
ハイスペックで人気も抜群の〝優等生キャラ〟のラビューに感服した一方、2025年度以降に引退予定のNRAにしっかりと乗っておきたいという思いは変わらない。ラビューとは「大違い」の旧世代ながらも奮闘し、駆け続けている姿にひとごとではない親近感を覚えるからだろうか。 ☆共同通信・大塚圭一郎(おおつか・けいいちろう)デジタルコンテンツ部次長。2013~16年のニューヨーク支局特派員、20~24年のワシントン支局次長を含めてアメリカに通算10年間住み、24年5月から現職。連載『鉄道なにコレ!?』も執筆している。