七尾で被災し、越中大手市場に初出店した「魚富」の堀さん（右手前から３人目）＝富山市の大手モール

　　●震災で販路絶たれ 　能登半島地震で被災した七尾市大田町の鮮魚店「魚富」は21日、富山市中心部の大手モールで開かれた定期市「越中大手市場」に初出店した。取引先だった和倉温泉の旅館が軒並み休業して苦境に立つ中、代表の堀智行さん（45）は富山のまちなかで新鮮な魚介類を届け、生業（なりわい）を続けられる喜びを感じた。来店客から激励を受けた堀さんは「出店を継続して何とか持ちこたえたい」と再起を誓った。 　堀さんら3人は金沢港で水揚げされた魚介類を使って、カニ汁や焼きハマグリ、イカなどを提供し、香ばしい匂いを漂わせた。 　カニとあさりのおにぎりを食べた富山市の会社員中嶋庸子さん（57）は「七尾をはじめ、被災地では大変な思いをされている方がまだまだいる。少しでも売り上げに貢献したい」と話した。 　堀さんは地震から半年余りが過ぎ復興支援イベントの開催が減ってきた中、富山で客から掛けられた「おいしかったよ」「頑張って」との声が励みになったとした。 　魚富は震災前、和倉温泉の旅館を中心に魚介類を卸しており、売り上げの7割を占めていた。地震で店に大きな被害はなかったものの、卸先の旅館は営業再開の見通しが立っておらず、売り上げは半減した。 　地震前までは能登島に店を構えていたが、3月、七尾市大田町のかまぼこ店内に間借りし、4月中旬からは移動販売や各地の復興支援イベントに出店して少しでも収益を上げてきた。富山市内のイベントへの参加は初めてとなった。 　今後、越中大手市場には8月31日のナイトマルシェ、9月29日には歩行者天国のイベント「トランジットモール」に出店する。「トランジットモール」は5月から民間主導となり、富山新聞社が事務局となっている。 　　●涼しい朝に買い物、飲食 　定期市「越中大手市場」の朝市には物販、飲食17店舗が出店した。午前7時に始まり、家族連れらは涼しい時間帯に街に繰り出し、買い物や飲食を満喫した。 　常連で出店している富山市小泉町の「太陽珈琲焙煎本舗」代表の六渡達郎さん（58）は「夏場の日中、外は誰も歩かないので時間を変えて良かった」と話した。 　越中大手市場は酷暑対策で、暑さが厳しい時間帯を避け、21日は朝市、27日はナイトマルシェを行う。市場を月に2度開催するのは初めて。ナイトマルシェは8月31日も行われる。