【ライブレポート】ユニゾン×クリープハイプ、お互いの存在へ感謝を示した武道館アニバーサリー対バン
UNISON SQUARE GARDENとクリープハイプの対バンライブ「UNISON SQUARE GARDEN 20th Anniversary LIVE“fun time 歌小屋”」が、7月26日に東京・日本武道館で開催された。 【写真】十数年にわたる絆を語る尾崎世界観 ユニゾンは7月24日に結成20周年を迎え、同日に日本武道館にて記念日ライブ「ROCK BAND is fun」を、翌日にオーケストラライブ「オーケストラを観にいこう」を開催。これに続いて行われた「fun time 歌小屋」ではインディーズ時代からの盟友であるクリープハイプが対バン相手として出演し、それぞれが長年の絆を感じさせるパフォーマンスを展開した。 ■ 尾崎世界観「ユニゾンはすごく大事なバンド」 最初にスタートしたのはクリープハイプのライブ。明るくなったステージに尾崎世界観(Vo, G)、小川幸慈(G)、長谷川カオナシ(B)、小泉拓(Dr)が登場すると、武道館中から大きな拍手が起こった。最初にマイクに向かった尾崎は「クリープハイプも長く活動してきて、そんなに周りのバンドのことを気にしていないんだけど、ユニゾンはすごく大事なバンドです。20周年本当におめでとうございます」とストレートに祝福の言葉を送る。「このステージに立たせてもらえて本当にうれしく思っているし、その期待に応えたいと思います」という決意に続き、尾崎は「ナイトオンザプラネット」のイントロをアカペラでゆったりと歌う。4人が生み出す浮遊感に満ちたハーモニーが、特別な夜の始まりを観客に印象付けた。 妖艶なグルーヴを醸し出した「キケンナアソビ」をじっくりと聴かせたのち、長谷川は初めてユニゾンのライブを観た当時の感想を語る。「自分も出ていた下北沢のライブサーキットだったんですけど、お客さんがすごく盛り上がっていて。そのまま人気も筋力も衰えず、令和になっても第一線で活躍してるのはすごいなと思います」と素直に称賛したあとは「かえるの唄」へ。長谷川の「茹だれ武道館!」という煽りに、双方のファンは大歓声で応えた。軽やかさと哀切さを併せ持つ尾崎のボーカルが響き渡った「チロルとポルノ」、さらに「ボーイズENDガールズ」を経て、「社会の窓」のラストでは尾崎が「ユニゾン、愛してる」とメッセージを送り、客席の大きな拍手を浴びた。 ■ カバーを通じて届けた感謝の思い 「イト」の軽快なアンサンブルを届けたあと、尾崎はユニゾンを知った当時を振り返り始めた。「今から18年か19年前、ユニゾンの存在を知ってて、曲も聴いていて。当時インディーズで全国流通していたCDも欲しかったけど、悔しくてネットで試聴していました。そうしたらあるライブのあとに田淵(智也 / B)くんが来て、『ライブ、すごくよかった』って言ってくれて。その頃の自分はバンドがうまくいってなかったけど、こんなふうになりたいと思っていたバンドの人が声をかけてくれたことで『もうちょっとやろうかな』と思えました」と当時の心境を明かした尾崎は「それからずっとバンドを続けて、こういう日に一緒にやれるのが心からうれしいです」と、長く続いた友情への喜びを述べた。 「そのとき田淵くんと交換したCDの表題曲をやります」という言葉に続いては2006年に発表した楽曲「ねがいり」を披露。会場がノスタルジックなムードに満たされたのもつかの間、4人はユニゾンの「さよなら第九惑星」のカバーを演奏した。この曲は2019年にリリースされたユニゾンのトリビュートアルバム「Thank you, ROCK BANDS! ~UNISON SQUARE GARDEN 15th Anniversary Tribute Album~」でもクリープハイプがカバーしたナンバーで、間奏にはユニゾンの「シュガーソングとビターステップ」のフレーズも取り入れたアレンジだ。4人の思いがこもった選曲と演奏に、観客は力強く拳を上げて応えた。 最後のMCで尾崎は「頻繁に会うわけでも、何回も対バンをしているわけでもないけれど、いてくれるだけですごく安心するし、どんな活動をしているかはずっと気にしています。ただ、いい加減にフェスでトリをやってほしいですね。田淵くんに会うと『すみませんね、トリ任せて』って言われるけど(笑)」とエールを送る。そしてラストナンバーとして「栞」を届け、ユニゾンへとバトンをつないだ。 ■ ユニゾンは原点回帰の選曲で 3日間にわたり武道館のステージに立ち続けるユニゾンの最終日。この日最初に披露されたのはインディーズ時代の2006年にリリースしたミニアルバム「新世界ノート」の1曲目「アナザーワールド」だった。鮮烈な逆光を浴びて演奏する3人の姿にオーディエンスが圧倒される中、さらに同作収録曲の「センチメンタルピリオド」そして先ほどクリープハイプも披露した「さよなら第九惑星」を連投。斎藤宏介(Vo, G)は「下北沢から来ましたUNISON SQUARE GARDENです。昔、田淵が交換したCDから3曲連続でお見舞いしてやりました」と誇らしげに語った。 ユニゾンとクリープハイプの対バンは2007年1月、ユニゾンによる自主企画イベント「箱庭フェスティバル」が最初だったとのこと。斎藤は「その頃からクリープハイプはめちゃくちゃカッコよかった。同郷とも言える大好きなバンドがずっとカッコいいままなのはUNISON SQUARE GARDENにとってどれだけ心強いか。そしてクリープハイプも今のメンバーになって今年で15周年です。今日は20周年と15周年を思い切りお祝いしてください」と双方のファンに呼びかけた。その後もユニゾンのライブは続くが、披露されるのは「23:25」「kid, I like quartet」「MR.アンディ」などバンド初期の楽曲ばかり。原点に立ち返るような選曲に、演奏が始まるごとに客席からは大きなどよめきが沸き起こった。 ■ 武道館3DAYS、一番練習した曲は 後半のMCで斎藤は、先ほど尾崎から託された「フェスのトリをやってほしい」というメッセージに対し「でも田淵のTシャツの胸元見て? 『NEVER BELIEVE ROCK FESTIVAL』って書いてある(笑)。思想が出ちゃってるんだよね」と回答。観客を和ませたあと、次の曲について「3日間さんざんいろんな曲をやりましたけど、一番練習しました」と話すと、その傍らで田淵も大きくうなずいた。「見せてやろうぜ、練習の成果を!」という言葉に続いて披露されたのは、クリープハイプ「イト」のカバー。「シュガーソングとビターステップ」のイントロからつながるアレンジにオーディエンスは大興奮。さらに2番では田淵がボーカルを務め、さらなる熱狂を巻き起こした。 「新世界ノート」収録曲の「箱庭ロック・ショー」が終わると鈴木貴雄(Dr)がアグレッシブなドラムソロを披露。怒号のような歓声が起こる中で鈴木はドラムセットから飛び出し、ステージ前方でジャケットの背中に描かれた20周年のロゴをアピールしてみせた。最後は「徹頭徹尾夜な夜なドライブ」「シュガーソングとビターステップ」「フルカラープログラム」とキラーチューンを連投したユニゾン。すべての演奏を終えると、斎藤は「武道館最高でした。またライブで会いましょう、バイバイ!」と挨拶し、田淵と鈴木とともにステージを去っていった。 初日と2日目はアンコールが行われなかったが、この日ばかりはアンコールの拍手と声が鳴り止まず、3人は再びステージへ。「さすがに疲れたよ(笑)」と苦笑する斎藤と田淵、鈴木は小声でアンコールの曲を相談し、ラストナンバー「シャンデリア・ワルツ」を投下した。3人の渾身の演奏に、オーディエンスも大合唱と力強いジャンプで応える。すさまじい一体感が武道館を包む中、3日間にわたる祝祭が締めくくられた。 なおこの日の終演後には、バンドの結成20周年イヤーを締めくくるライブイベント「20th Anniversary LIVE FINALE『fun time tribute』」が12月25日に大阪で行われることがアナウンスされた。 ■ セットリスト □ 「UNISON SQUARE GARDEN 20th Anniversary LIVE“fun time 歌小屋”」2024年7月26日 日本武道館 クリープハイプ 01. ナイトオンザプラネット 02. キケンナアソビ 03. かえるの唄 04. チロルとポルノ 05. ボーイズENDガールズ 06. 社会の窓 07. イト 08. ねがいり 09. さよなら第九惑星 10. 栞 UNISON SQUARE GARDEN 01. アナザーワールド 02. センチメンタルピリオド 03. さよなら第九惑星 04. 23:25 05. kid, I like quartet 06. MR.アンディ 07. to the CIDER ROAD 08. イト 09. 箱庭ロック・ショー 10. 徹頭徹尾夜な夜なドライブ 11. シュガーソングとビターステップ 12. フルカラープログラム <アンコール> 13. シャンデリア・ワルツ