【問われる復興】長期課題の道筋を(12月31日)
元日に能登半島地震が起きた2024(令和6)年は、災害への備えや復興の在り方を改めて考えさせられる1年になった。被災地が抱える苦悩はどうしたら解き放たれるのか。本県復興は東京電力福島第1原発の廃炉や除染土壌の処分などの重要課題が大きな局面を迎えている。早期に解決の道筋を付ける必要があるとの意識を共有し、新年を迎えたい。 2025年度政府予算案の東日本大震災復興特別会計は6592億円で、今年度当初予算を261億円上回った。政府の手厚い支援がある第2期復興・創生期間の最終年度として、着実に成果を積み上げ、次のステージにつなげていかねばならない。 新年の焦点となるのが、第2期終了後の政府方針だ。全閣僚で構成する復興推進会議は27日の会合で、2026年度から5年間の予算規模を1兆円台後半にする方向性を了承した。このうち本県分は第2期分の1兆2千億円を大きく超えるという。長期化する原子力災害への対応などが反映された点は評価できる。
一方、一部事業の見直しを求める声が政府内で上がっている。予算は確保されても、事業対象が制限されるなど制度や仕組みが変更されると、復興は停滞しかねない。国は、地元の意向をしっかりと受け入れ、事業を円滑に進める責任がある。 除染土壌の中間貯蔵施設にとっても、新年は正念場になるとみられる。法律で定められた2045年3月までの県外最終処分実現に向けた基本方針が春ごろまでに策定される。ただ、受け入れ先の確保など課題は山積している。今月20日に設置された閣僚会議の指導力が問われる。 廃炉を巡っては、11月に福島第1原発2号機から溶融核燃料(デブリ)が初めて回収された。来年3月にも2回目の採取に挑む。国と東電はデブリを分析し、本格的な取り出し開始へ準備を加速させるとしている。工程表は2051年までの廃炉完了を目指している。目標を着実に達成するとの確約の下、工法の技術開発に全力を挙げるべきだ。
震災と原発事故発生から来春で丸14年となるが、風化の加速が懸念されている。政治家と中央官庁、被災地の熱量の維持が課題の打開に欠かせない。(角田 守良)