バントとフライ練習で大盛り上がり!? 入部申し込みが殺到する「練馬アークスJr.ベースボールクラブ」
東京都練馬区を中心に活動する「練馬アークスJr.ベースボールクラブ」。結成まだ2年半と歴史の浅いチームですが、部員募集を開始すると申し込みが殺到するといいます。少年野球人口が減少している現在、それでも子どもが集まるチームはどんな練習をしているのでしょうか?週末のグラウンドに足を運んでみました。 【初めてのバント練習】 練習が行われるのは土、日いずれかの半日だけ。安全面を考慮してメジャー(主に5、6年生)、マイナー(主に3、4年生)、ルーキー(主に1、2年生)の3つに分かれて行われています。 この日の練習は、前週に行われた練習試合の振り返りからスタート。相手ピッチャーがスローボールを効果的に使っていたことをついて触れ、「ウチもキャッチボールのなかでスローボールの練習もしてみようか?」と中桐悟代表が子ども達に提案。キャッチボールが始まると子ども達は早速スロ-ボール投げにチャレンジしていました。 キャッチボールの後は、メジャー組はバント練習、マイナー組は外野でフライキャッチの練習。マイナー組は反対のグラウンドで内野守備の練習を行いました。 実はこの日がチーム結成以来、初めてのバント練習。試合では基本的に「打つ」のみでバントをさせたことはないチームが、なぜバントの練習をすることになったのでしょうか? 「コーチとも話してバッティングの上達に繋がるかなと思ったのと、守備の練習にもなると思ったんです。こちらがバントをしなくても相手はしてくるわけですから、バントをされたら野手はどう動かないといけないのか? そこは練習をしないと子ども達も分からないですもんね」 バントも指導者が手本を示して「こうやれ」と指示をして行うわけではありません。コーチがホワイトボードに内野の守備位置を書き、ファーストベースにランナーに見立てた磁石を置きます。 「ノーアウト1塁です。バッターはどこを狙ってバントするのが良いと思う?」 子ども達に問いかけます。 「サードはチャージをかけてくるけどファーストは(牽制があるから)ベースから早く離れられないからチャージが遅くなる。だからファースト側にする」 「サード側にした方がファーストまで投げる距離が遠いからセーフになる可能性が高い。だからからサード側じゃない?」 「サードとピッチャーの間にバントしてピッチャーに捕らせた方が逆モーションになって投げにくいからピッチャーに捕らせる」 子ども達から色んな意見が挙がります。 ここでコーチが「(この場面で)バントの目的ってそもそも何だろう?」と改めて子ども達に問いかけます。目的は打者走者がファーストでセーフになることではなく「ファーストランナーを二塁に進めること」であることを子ども達が理解すると、そこから「ファースト側にバントする」という答えが出てきました。 さらに「自分たちが守りの時はどう動いたらいいかな?」とバント議論がなおも続き、議論が終わったところでようやく「じゃあやってみよう!」とバント練習がスタート。 コーチが基本的な構えなどを教えて、ある程度転がせるようになってきたところで、バッターボックスから数メートルのところに半円が描かれ、「この中にボールを止めるようにやってみよう」とバントゲームが始まりました。ボールが線から出た、出ない、それだけのことで子どもは大いに盛り上がっていました。 【週末だけの練習でも基礎はしっかり】 外野の方からも子ども達の笑い声が聞こえてきます。二組に分かれてテニスボールのフライをキャッチするだけなのですが、どっちが多く捕れるかという競争形式にしていたため、捕っても落球しても子ども達は大盛り上がり。 バントとフライの練習でここまで盛り上がれるのかと感心するほど、子ども達は楽しそうに練習に没頭していました。 練習の最後はメジャーとマイナーをミックスして、カウント0-1からスタートする紅白戦。「紅白戦は基本的に毎回やっています。子ども達はやっぱり試合をやるのが一番面白いですからね」。 ピッチャーは交代制でしたが、ある1人の子がスローボールを投げました。この日の練習開始前に話していたことを紅白戦でも試したのです。これには球審を務めていた中桐代表も「ナイスチャレンジ!カウント0-2だから試してみたんだよね?いいよ!」と目尻を下げていました。 1、2年生が中心のルーキー組の内野ノックを見ていると、みんなしっかり捕り、しっかり投げられていました。変な投げ方をしている子もいません。楽しくやりながらも基礎をしっかり教えてもらっていることがよく分かりました。 「(野球未経験の子がほとんどなので)まず『ボールを捕る』の手前、『グローブに当てて落とす』ところからのスタートですね。その次の『投げる』については、U12の指導者研修で学ばせてもらった『ゼロポジションを作って投げる』練習。これをひたすらやっています。最初にフォームを綺麗にさせてあげないともうぐちゃぐちゃになってしまいますから」 『練馬アークスJr.ベースボールクラブ』の月謝は7300円。学童野球チームにしては高額な方ですが、それによってコーチへ謝礼を払うなど、「大人の数」が十分に足りていることから保護者の負担はゼロ。 大会の優勝を目指すチーム、練習の厳しいチーム、色んなチームがあって良いと思いますが、『練馬アークスJr.ベースボールクラブ』のようなチームはもっと増えて良い。楽しそうな子ども達の姿を見てそんなことを思いました。(取材・写真/永松欣也)
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