漁協「冷蔵庫が心配」観光施設「書き入れ時だったのに」…長引く停電、暮らしに大打撃 台風10号の猛威まざまざ、復旧へ住民は気をもむ
台風10号は30日、鹿児島県を風速15メートル以上の強風域に巻き込みながら、時速15キロで九州地方を北東に進んだ。孤立していた薩摩川内市東郷町藤川の集落は、同日昼に往来できるようになった。停電は県内全域で続き、7万戸以上(午後5時現在)が不便を強いられた。産業や暮らしへの打撃が長引く恐れがある。 【写真】〈別カット〉停電中の店内で、片付けに追われる従業員ら=30日、指宿市の市営唐船峡そうめん流し
最大瞬間風速51.5メートルを記録し、世帯の約半数が停電している枕崎市では、漁業関係者が頭を悩ませている。市漁協はパソコンや電話が使えず、通常業務が滞ったまま。水揚げした魚を保存する冷凍倉庫が最も心配で、揚野功統括参事(59)は「保温性能が高く数日は問題ないが、長期化すると影響は避けられない」と神経をとがらせる。 観光施設にとっては、夏休み最終週の書き入れ時を直撃された格好だ。 例年、8月は一日平均千人以上が訪れる指宿市開聞の市営唐船峡そうめん流しは、30日の営業を休止した。冷蔵庫の電力は自家発電でまかなうが、地下水をくみ上げる装置が使えない。片付けや清掃は、離れた水道まで水をくみに行くなど手間がかかった。海江田勝博支配人(57)は「休業が長引くと相当な痛手。楽しみにしているお客さんのためにも早く復旧してほしい」 宿泊や温泉施設、物産館などがある南さつま市加世田の複合施設「ガンバリーナかせだ」では29日早朝から停電が続いた。30日は携帯電話のライトなどを頼りに、調理場の掃除など営業再開へ準備を進めた。
1日約400人が訪れる温泉は28日から休館。30日夕にようやく通電し、31日の団体宿泊客35人の受け入れは可能になった。指定管理者のガンバリーナ活性化協議会・高倉正文代表(76)は「ひとまずほっとした。明日の温泉再開は難しく、停電による損害はまだ大きくなる」と気をもむ。 暮らしへの影響も続く。南大隅町のファミリーマート根占川北店は29日夕に停電は解消したものの、30日は冷凍食品や乳製品のほとんどを廃棄せざるをえなくなった。福元慶祐店長(27)は「食べられるものもあるが、衛生面を考えると仕方ない」と肩を落とした。 園児6人が通う同町佐多馬籠の「はまゆう保育所」周辺は停電だけでなく断水も続く。代表の前田利香さん(51)は「給食を作ることができず、開園のめどが立たない」という。 最大83%の世帯が停電した肝付町は、役場に隣接するコミュニティセンターにスマートフォンなどを充電できるコーナーを設けた。住民から「いつ復旧するのか」などの問い合わせが相次いでおり、町の担当者は「詳細が分からず心苦しい。電力会社の情報を確認してほしい」と話した。
南日本新聞 | 鹿児島