菅野智之「やっては裏切られ、やっては裏切られ」「ガツガツしなくなった」12年目 心の変化で開幕5連勝
◆日本生命セ・パ交流戦 西武1―7巨人(2日・ベルーナドーム) 巨人が西武に快勝し、5月15日以来の首位に返り咲いた。先発の菅野智之投手(34)は7回4安打無失点の好投。自身3度目の開幕5連勝を飾った。打線も5回に緊急昇格即スタメンの秋広優人内野手(21)が口火を切り、5安打を集め3点を先制。7、9回にも加点する理想的な展開で3カード連続の勝ち越しを決めた。4日からは本拠地・東京Dに戻りロッテ、オリックスとの6連戦に臨む。 先制は意地でも許さない。菅野はギアを上げた。3回2死三塁。フルカウントから7球目、カーブを投じると源田のバットが空を切った。その後も得点を与えず、7回4安打無失点で20年以来自身3度目の開幕から無傷の5連勝。チームも5月15日以来の首位に浮上した。 「昨日、嫌な負け方(サヨナラ負け)をしてしまったので、先制点をなるべく与えないように入った。味方のいい守備にもたくさん助けられ、それが0点という結果になったと思う。源田選手のところは思い描いた通りにいい三振が取れた」 ベテランらしい姿を見せた109球。「スライダーが良くなかったので」と変化球はカットボール、フォークを効果的に使い、カーブも要所で駆使した。4回2死一、三塁では元山をカーブで左飛。多彩な変化球を操れるからこそ、状態に応じた投球を組み立てられる。「そこは僕の強み」とうなずき、阿部監督も「粘り強く、結果的にいいピッチングだった」とたたえた。 17年以来2度目のベルーナDでは初勝利で、未登板のエスコンを除く12本拠地で勝利。通算126勝目で、相手の渡辺久信監督代行の125勝を目の前で超えた。無傷での5勝には「僕だけの力じゃない。接戦をモノにできている試合もありますし、接戦で自分も粘れているところもある」と自身を含めたチームの昨季との違いを語る。規定投球回には1回1/3届いていないが防御率は現在リーグトップの広島・大瀬良(1・268)を上回る1・20と圧倒している。 プロ12年目の今季、試合中の表情はこれまでよりも柔らかくなったように映る。特段意識してはいないというが、「余裕を持って投げられるようになったからじゃないかな」と自己分析し、「あと、ガツガツしなくなった」とも明かした。「ガツガツ―」の真意とは。現在よりもタイトル獲得への思いが強かった過去との心の変化があった。 「防御率も現状いいけど、いつかは打たれるときが来る。そう思っていないとつらい。昔は力があったから、ギラついて『やってやるぞ』って気持ちでできた。でもこの数年、やっては裏切られ、やっては裏切られて。極力そういうものがない方が自分にもチームにも絶対いいと思ったから、そういう感情は捨てて、1試合で出し尽くそうという気持ちでやっている」 だから現在好数字を残していても「勝てればいいので。シーズンが終わった時に、一番いい防御率だったらいいなと」と謙虚に語る。ヒーローインタビューでは「(4勝だった)昨年のことは昨年でもう忘れているので、新しい自分をこれから磨いていきます」と宣言した菅野。眼前の登板で全力を尽くし続け、秋の歓喜へつなげる。(田中 哲) ◆高木豊Point コバと“楽しんでる” 菅野は勝っている余裕もあるのだろうが、マウンドで慌てず落ち着いている。小林とピッチングの会話を楽しんでいるようにも見える。カットボールを内外角に投げ分けて、いつでもストライクが取れる。困っても投げる球があることが好調の要因。3、4回に走者を三塁に背負ったピンチにはともにカーブで打ち取った。これも緩い変化球を隠しながら、粘られた時に使ったことでより有効になった。小林の幅広いリードのおかげだ。 ◆記録メモ 菅野(巨)は開幕5連勝。14年6連勝、20年13連勝に次いで開幕5連勝以上が3度目。開幕5連勝以上を4度記録したスタルヒン(巨)、御園生崇男(神)、郭泰源(西)、工藤公康(西2、ダイエー1、巨1)、3度の杉浦忠(南海)、金田正一(国鉄2、巨1)、北別府学(広)、山根和夫(広2、西1)、山本昌(中)に次いで10人目。巨人では38年春11連勝、秋10連勝、41年5連勝、44年6連勝のスタルヒンに次いで2人目だ。
報知新聞社