吉村洋文大阪府知事、北陸新幹線の敦賀ー新大阪ルートの考え方は 建設費倍増や米原ルート求める声どう見る
北陸新幹線敦賀-新大阪間の整備について、大阪府の吉村洋文知事は「乗り換えなしで大阪まで一日も早くつなぐことが重要」とし、与党や沿線自治体などが合意している小浜・京都ルートを支持する。ただ、国土交通省の新たな試算で当初想定より建設費が倍増し工期が延びる見通しとなったことに「国からきちんと見解が示された時点で、小浜・京都ルートが着実に実現できるのかを関係者間で深く議論すべきだ」と指摘。「米原ルート」の再考を求める石川県などの声については、無視はできないとの見方を示した。 -小浜・京都ルートで新大阪まで全線開業する意義は。 「福井-新大阪が約55分でつながるメリットは大きい。ちょっとおいしい魚を食べに行こうとか、デートで寄ろうかとか、気軽に行き来できるエリアになる。大阪府として小浜・京都ルートを支持しており、一日も早く開業するべきだ」 -南海トラフ巨大地震などで東海道新幹線が寸断された場合の代替機能を果たす役割も期待される。 「国土軸のリダンダンシー(多重化)の観点からすると、日本海側に新幹線を整備することは国家的な要請といえる。7月下旬に東海道新幹線の一部区間が終日運休するトラブルがあった。東海道だけではあまりに心もとない」 -国交省の新たな試算では、小浜・京都ルートの建設費が当初想定の倍となる最大約4兆円となり、工期も15年から25~28年に延びる見通しだ。 「(国から正式に示されていないが)2兆円の増加となると、事業採算性を考える上で大きなインパクトだ。国民や地元自治体の負担がそれだけ増えることを意味する。地下水への影響などから反対意見もある京都府民の理解を得られるかを含め、大阪までの早期開業が本当に実現できるのか、厳格な議論が避けては通れない」 -費用対効果が建設費倍増で悪化し、大きな課題となる可能性がある。与党整備委員会の委員らからは「算出方法の考え方が古い」などと見直しを検討すべきだとの声もある。 「建設費が増えるからといって、整備新幹線の従来のルールを変更すると、サッカーに例えれば『ゴールポストの位置を動かす』というふうに国民から見られるのではないか。政策を決めるプロセスとしていかがなものか」 -建設費の地元負担軽減に向け、与党整備委の西田昌司委員長は、国の交付税措置率を高めるなどの対応を考えるとしている。」 「賛成だ。大阪から東京までみんなが使う新幹線なのに地元だけが負担するのはおかしい。地方財政が成り立たなくなる」 -米原ルートの再考を求める声をどう見る。 「関係者全員が合意したのは小浜・京都ルート。ただ、石川県議会がルート再考を決議し、日本維新の会の国会議員団も同様の主張をしている。米原ルートという代替案を訴える意見があるということは、尊重しないといけない」 -政府・与党で2ルートを一から比較検証すべきだという考えか。」 「乗り換えなしで大阪までつなぐという点は、私の中で非常に重要なポイントだ。米原ルートでは米原駅で東海道新幹線への乗り換えが必要という議論は当然あるだろう。一方で、小浜・京都ルートは建設費が上振れし工期も大幅に延び、工事の難易度も高い。米原ルートに積極的にくみするわけではないが、2案を冷静に整理した上で、トータルで最終判断すべきではないか」 ※インタビューは8月1日に福井市内で行った。
福井新聞社