10月1日(火) より東京国立近代美術館でスタートの「ハニワと土偶の近代」 全容と見どころを紹介
この秋、東京国立近代美術館にて「ハニワと土偶の近代」と題した展覧会が開催される。モダンアートを扱う同館で、なぜハニワと土偶に焦点を当てたのか。展覧会に先駆け、企画の意図や見どころを紹介しよう。 【全ての写真】「ハニワと土偶の近代」で展示される、岡本太郎《犬の植木鉢》 去る5月30日、同館にて記者発表会が行われた。登壇したのは、同展を企画した花井久穂主任研究員と、成相肇主任研究員。ハニワの研究をする花井氏と、土偶の研究者である成相氏がタッグを組んだ形だ。 同展の大きな特徴は、ハニワや土偶そのものを展示するのではなく、それらが登場する美術作品を扱う部分にある。戦後、岡本太郎やイサム・ノグチによって、出土遺物が美的な価値をもつようになったが、それらがモチーフになっているものは、彼らの作品だけにとどまらない。そういった「出土モチーフ」の歴史を、明治時代から現代にかけて追いつつ、変遷をたどる。 さらにもうひとつのポイントは、取り上げる時代とジャンルの幅広さ。明治時代に描かれたスケッチから、抽象画、キュビズム、さらには現代のマンガやテレビ番組までと、遺物はあらゆる文化に連なっている。ハニワと土偶は「ブーム」、つまり分化現象となって、さまざまなジャンルに広がったのだ。花井氏はこう話す。 「ハニワと土偶は、時々の国家観を表すとともに、時代考証のために使われてきました。そういった考古学的観点の裏で、戦後は大衆化していきます。人々の遺物への思いが、こうしてすそ野を広げることにつながったのです」 序章から始まり、1章「『日本』を掘りおこす」、2章「『伝統』を掘りおこす」、そして現代に続く3章「ほりだしにもどる」と連なっていく今回の展示。成相氏は「特にモダンアートに通ずる2章を厚く」と語っており、この展覧会を東京国立近代美術館で開催する意義を強調する。 同展の音声ガイドは、『ONE PIECE』のルフィの声などで知られる、声優の田中真弓さん。本展でも取り上げられているNHKの教育番組「おーい!はに丸」で、はに丸の声を務めたことがきっかけだという。また、会期中には何かしらのイベントを開催予定であるとし、成相氏は「まだ何をするか決めていませんが、10月9日(土偶)と11月20日(ハニワ)の日にしようと思っています」と、ユーモアをのぞかせた。 研究員両氏のハニワ愛・土偶愛にあふれた展示内容。これまで遺物が人々に愛されてきた理由を紐解く展覧会になるだろう。早くも胸が躍る。 取材・文:飯塚さき <開催情報> 「ハニワと土偶の近代」 会期:2024年10月1日(火)~12月22日(日) 会場:東京国立近代美術館