巨人・戸郷「軸で回るのはお前」阿部監督の言葉と行動で感じた「信頼」 エースと言われ菅野さん超えたい【独占手記】
熱い応援、ありがとう-。巨人を4年ぶりのリーグ優勝へ導いた戸郷翔征(24)が、デイリースポーツに独占手記を寄せた。プロ6年目で初めて開幕投手の大役を務め、座右の銘でもある「勇猛果敢」に戦った1年。エースとは…を自問自答した日々を赤裸々に明かした。阿部監督に尊敬する菅野との秘話や、愛してやまない“家族”の存在とは-。実はまだ24歳の「今」を正直に綴った。 【写真】至福の瞬間! Vシャワーを浴びて恍惚の表情を見せる阿部監督 ◇ ◇ 巨人軍のエース。プロ6年目で初めて開幕投手を務めた1年で、少しずつ皆さんにそう言われるようになりました。嬉しいことですが、それを決めるのは僕じゃない。何年間も成績を出し続ける選手、勝たなきゃいけない試合で勝てる選手。エースとは何か…今年はすごく考えた1年でした。 阿部監督の就任1年目に、開幕投手の指名を受けた。昨年11月30日。たまたま一緒になったイベントの壇上で、いきなり「開幕は戸郷でいきます」と。僕も「えぇー!!」となった記憶が強いですね。監督は口数が多いタイプではないんですが、ここ2、3年ずっと言ってもらっている言葉が、支えでもありました。 「軸で回るのはお前だからな。俺はずっとそう思っている。どれだけ成績が出なくても、お前が離脱することはないよ」 そんな言葉と行動で改めて感じたのは「信頼」です。そういう言葉一つで不思議と気持ちも楽になりました。振り返って印象に残っているのは、5月10日のヤクルト戦(神宮)。三回までに四球を2個出して、ベンチで肩を組まれながら監督に言われました。「100%を求めすぎるな」-。制球を求めたりとか完璧な投球をしようとか、そう思うことがすごく今年は多くなりました。すごく重圧を感じていましたし、責任感も自分が思っているより体が感じてるんだなと思いました。その言葉がなかったら、もっと崩れた試合になっていた。ターニングポイントになった試合ですね。 実はこれ菅野さんから、何度も言われた言葉でした。自分の理想がある中で「一年間いいコンディションでやれる人なんていないんだぞ」と。歴代エースの球を受けてきた監督と、エースとしてチームを背負ってきた先輩。2人の言葉がリンクして驚きました。僕も少しですが成長をして、最近感じていることがあります。4年前に「いつかは超えたい」と誓った背中が、年々見えなくなってきているな、と。 新聞などで「エース対決」と、言ってもらうことも増えました。ここまでいろいろな経験をさせてもらいましたが、菅野さんの言葉で分からないこともあるのが現実。場面、場面での攻め方にも、いろいろな引き出しがあります。年々、存在は近くなっているのに、追い掛けているはずの背中が遠い。より、すごさを感じる一年だったと同時に、やっぱりいつかは超えたいと思う背中です。 超えるため…もっといい投手になるために、僕には“宝物”があります。高校時代から習慣にしている日記です。「野球ノート」と言えば少し堅苦しいですが、登板日に打者と対戦して感じたこと、原監督や阿部監督との会話。状態が悪い時に昨年のノートを見返したら、この時期にまた同じように悪くなっていたんだな、とか。イライラしている時はそういう文になっていますね。中身は公開できないですが、僕にとって野球人生を支える大切なものです。 三振に憧れて始めた野球人生。嬉しいのは見逃しではなく空振り三振です。分かっていても当たらない球が投げられた時、野球って楽しいなって思います。中でも生涯のベスト三振は「プロ野球選手になったんだ」と感動した初登板。19年9月21日のDeNA戦でした。勝てば優勝の大一番で先発。初回、先頭の乙坂さんからスライダーで空振り三振を取りました。「プロで生きていける」と感じた僕の原点です。 2度目の最多奪三振も見えてきました。現在156個ですか。印象深いのはオースティン(DeNA)から奪った3打席連続三振や、今年は村上さん(ヤクルト)からフォークでいい三振が取れています。その中で一番は…こういう時のために、めちゃくちゃ準備してるんですよ。これは言いたいなとか、たくさんあるんですけどね。印象深い三振を、チームに勢いを与えられる三振を1つでも多くこれからも積み重ねていきます。また、聞いて下さいね(笑)。(読売巨人軍投手) ◆戸郷 翔征(とごう・しょうせい)2000年4月4日生まれ、24歳。宮崎県出身。187センチ、84キロ。右投げ右打ち。投手。18年度ドラフト6位で巨人に入団。19年9月21日のDeNA戦でプロ初登板、初先発。同27日の同カードでプロ初勝利。22年に最多奪三振のタイトル。22年から3年連続2桁勝利。