ディーラーvsカー用品店 クルマのメンテはどちらで行うべき? 両者は今後、共存できるのか
社外品取り付けの新潮流
コロナ禍以降、半導体不足による新車の納車時期の長期化で、ディーラーは利益の出し方を変えざるを得なくなった。ディーラーの主な収入源は新車販売のほか、 ・点検/整備サービス ・自動車保険 である。新車販売で利益を上げられない場合、別の方法で利益を上げなければならないため、既存のクルマに社外品を取り付ける作業で得られる工賃にも頼っている。 腕に自信のある人はDIYで作業を行えるが、最近のクルマは電子制御化が進んでいるため、ちょっとしたミスが故障につながることもある。そのため、バルブの交換のような簡単な作業でもディーラーを利用するよう、ディーラーのスタッフが顧客に促すのが現実だ。 しかし、カー用品店と同様、ディーラーも「働き方改革」により業務効率化が求められているため、ディーラーと提携している外注業者に作業を委託し、ペーパーマージン(帳簿上でのみ発生する利益)を得るケースもある。 外注業者はディーラーの敷地内で作業を行う。特に、オーディオ機器などの配線加工が必要な場合、点検・整備は自社の整備士に任せ、電装関連は外注するという分業体制になっているようだ。 また、ディーラーでは、電装品以外の、顧客が持ち込んだ部品の取り付けも行っている。サスペンションキットなどの部品をカー用品店のECサイトで買い、多少工賃が高くても信頼のおけるディーラーに ・取り付け ・アライメント調整(ホイールの取り付け方を調整し、メーカーが設定した標準値に合うようにすること) を依頼する顧客もいる。このように、カー用品店でモノを買い、ディーラーで取り付けを依頼するという分業が定着しているのだ。
新時代のディーラー戦略
ただ、ディーラーは、必ずしも社外品の取り付けを快く引き受けてくれるわけではない。 ディーラーに併設されているサービス工場は、国から認証や指定を受けているので、国が定めた安全基準をクリアした車両しか整備できない。そのため、カー用品店やECサイトで買ったパーツを取り付けることで、その車両が 「安全基準を満たさなくなる」 場合は、当然ながら入庫を拒否される。大手カー用品店で販売されている社外品のほとんどは、保安基準に適合しているので問題ないが(車検対応)、ECサイトには怪しげな商品も売っているところもある。 ディーラーで取り付けを依頼する際は、グレーゾーン商品だと最初から断られることもある。もちろん、多くのカー用品店は国の認証や指定を受けているので、こちらも断られる。かつては、 ・ディーラー:クルマを買う場所 ・カー用品店:社外品を買う場所、あるいはちょっとした整備を依頼する場所 という明確なすみ分けがあった。しかし、その意味合いが徐々に変化している。現在では ・ディーラー:クルマを買い、整備を受けたり、社外品も取り付けたりできる場所 ・カー用品店:社外品を見て触れて、体験して、買える場所 となっている。カー用品店も、ライフスタイルに密着した商品ラインアップで付加価値を提供している。今後もこのすみ分けから目が離せない。
宇野源一(元自動車ディーラー)