「広島を訪れ実相を見つめて」若い世代の当事者意識が核廃絶への道につながる 平和教育を受けた国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソンさん【被爆78年の願い】
国際ジャーナリストのモーリー・ロバートソンさん(60)はコメンテーターやミュージシャンとして幅広く活躍する。米国籍ながら父親の仕事の関係で広島に移り住み、小中学校で平和教育を受けた。原爆が題材の漫画「はだしのゲン」も読んでいた根っからの広島人だ。 世界の平和の一丁目一番地は原爆を二度と使わないことだと信じ、多くの人に広島を訪れ、現実を見てほしいと願う。日米双方のアイデンティティーを持ち、葛藤し続けてきたモーリーさんに、核兵器を取り巻く現状をどう見ているのかインタビューした。(共同通信=益子真之介) ▽自分の意志で日本の小学校に転校 米国人で医師の父親が米政府のプログラムに志願し、原爆による人体への影響を調査するために設立された原爆傷害調査委員会(ABCC、現・放射線影響研究所)に勤めることになりました。結局、5~13歳の8年間を広島で過ごしました。毎日学校が終わると、ABCCの建物に置いてあったたくさんの漫画を読みながら、父の仕事が終わるのを待っていました。日本語に対する愛着や、漢字を読めるようになりたいという欲求が強まっていきました。
小学5年生の時に、通っていたインターナショナルスクールで日本語が禁止されたのをきっかけに、自分の意志で公立の小学校に転校したんです。せっかく日本の小中学校を卒業するのに、日本語の読み書きもできないのはまずいだろうと。そこから急速に日本化が進みました。日米の学校を行き来する中で、文化の違いにとまどうことも多かったです。 ▽「普通の人たち」が広島を訪れるようになった 昔は広島を訪問する外国人は高収入、高学歴で意識の高い人が多かった。冷戦時代には、限られた知識人や科学者のような人たちしか広島を訪れませんでした。 最近は訪れる外国人が増え、原爆資料館周辺でアイスクリームを食べているような一般家庭の人もたくさんいます。日本のアニメ人気や円安も後押ししているのでしょう。 取材で広島を訪れると、原爆資料館で被爆の実相に触れた人々が青ざめた顔をして出てきます。米国の教科書にはあまりはっきりと書いていないから、実相を本当に知らないのだろうと思います。原爆は戦争を終わらせるための必要悪だったのではない、核兵器は使ってはならないということを感じているはずです。