30秒で「彼がロマンだ」と…実話に基づく愛の映画『ファイアバード』トム・プライヤーが語る“最後の表情”
愛とはこういうものなんだ
――作り手でもあるトムさんがこの映画を通して、観客に一番届けたいものはなんですか? トム 愛とはこういうものなんだ、ということが観客に伝わると嬉しいですね。伴侶となる相手がそこにいても、いなくても、愛は厳然としてそこにある、ということ。私たちは何かの軋轢によって愛する人と人生を共に歩めない時もあるし、もし愛が成就すれば奇跡のようで特別な感情が生まれます。そして愛を失った時の喪失感もあるけれど、それらの全てが美しいものなんです。人間は経験や感情に起伏はありますが、“真我の中に愛は一貫してあるものなのだ”と言うことを届けたいです。 愛する人と一緒にいることが出来ても、出来なくても、愛は存在し、感じることが出来る。だから、セルゲイは最後の最後に微笑みを見せるんです。ロマンは彼に「僕はいつでも君と一緒にいる」と言う手紙を残します。だからセルゲイは悲しみに打ちのめされながらも、一縷の希望を感じ、あのように微笑むんですね。愛は時空を超えるものであり、愛は我々の中にある、と言うものを表現したつもりです。そして我々、ユニバーサルな一体としての人間の中に愛はある。人が死んでも、愛は消えないし、全てが失われたわけではないんです。 この映画を観た人から、「なんでこんなに悲しい結末にしたんだ!」「悲恋すぎるじゃないか」と言われる時があるんですよ(笑)。でも実話がベースなのでそこはリスペクトしたかった。セルゲイが最後に笑みを浮かべるか、どうか、と言うのも撮影中に異論はありましたが、僕は絶対にこうしたいと主張しました。セルゲイは夢のような恋をした。でも夢が終わっても、愛も希望も決して消えはしないんです。 トム・プライヤー 俳優・脚本家・プロデューサー。王立演劇学校(RADA)で学び、2012年に卒業。卒業後脚本の執筆活動を開始。2014年に初の短編映画『Breaking the Circle』を手掛けた。『ファイアバード』では共同脚本家としてクレジットされている。主な出演作に、エディ・レッドメインの息子ロバート・ホーキングを演じた『博士と彼女のセオリー』(2014)、『キングスマン:シークレットサービス』(2014)、ITVの『新米刑事モース~オックスフォード事件簿』(2012/13)など。
石津 文子