米、過去最大規模のウクライナ軍事支援9460億円 パトリオットのミサイル供与
【ワシントン=坂本一之】オースティン米国防長官は26日の記者会見で、ロシアの侵略を受けるウクライナへの軍事支援に関し、地対空ミサイルシステム「パトリオット」用のミサイルなど過去最大規模となる60億ドル(約9460億円)相当を新たに供与すると発表した。防空装備を強化し砲弾なども支援する。ただ防空システムによる迎撃はコストが高く、戦闘が長期化する中で財政的な負担も課題となる。 24日に成立した約600億ドルのウクライナ緊急支援予算から拠出する。 新たな軍事支援は、防空装備として高性能地対空ミサイルシステム「NASAMS」用のミサイルや対無人機システムなども供与。露軍の占領地奪還に向け高機動ロケット砲システム「ハイマース」用弾薬や155ミリ砲弾、攻撃用の無人機などを支援する。レーダーや戦闘用車両も供与する。 ■ロシアによる新たな侵略抑止を確認 オースティン氏は会見で、防空装備の重要性を指摘し、24日に発表した10億ドル相当の軍事支援を含め「ウクライナ防衛への永続的なコミットメントを示すものだ」と強調した。 オースティン氏は会見に先立ち、ウクライナの防衛支援を巡る関係国会合をオンライン形式で開催。支援継続やロシアによる新たな侵略を抑止していく重要性を確認した。会合でウクライナのゼレンスキー大統領は、都市の人命を守るため「少なくとも7基のパトリオットが必要だ」と緊急支援を求めた。 オースティン氏は会見で、パトリオットの追加供与に向けて欧州の国などと協議を進めていることを明らかにした。 ■防衛産業から装備を購入して送る 26日発表の支援は、米軍の在庫から装備を素早く供与するものではなく、防衛産業から装備を購入して送る「ウクライナ安全保障支援イニシアチブ(USAI)」の枠組みで、実際の供与までに時間がかかる。 また防空装備を巡っては、戦闘が長引く中で欧米側の財政的負担がさらに膨らむ可能性もある。 米欧は露軍のミサイルや無人機の攻撃を防ぐ装備の供与を進めるが、一般的に攻撃兵器よりも防空システムや迎撃ミサイルの方がコスト高になることが多い。
軍事専門家からは、従来の防空装備よりもコストが抑えられるマイクロ波やレーザーで無人機やミサイルの攻撃を防ぐ装備の必要性を指摘する声も出ている。