ボルボXC60 アルティメットB5 AWD 少しずつ進む電動化への過程 新時代のボルボらしさを実感
北欧らしいイイモノ感とは?
ボルボXC60の動的質感は、ジャーナリスト泣かせな部分があるかもしれない。 メルセデスのように中身がぎゅっと詰まった質感によって訴えかけてくるわけではなく、アルファ・ロメオのようにターボの炸裂とハンドリングで感化されるわけでもない。国産のハイブリッドモデルのようにパワートレインの妙だけを強調してくるわけでもないのだ。 スウェーデンではないけれど、かつて訪ねたフィンランドで食べたお酢が効いた料理の数々。ご飯には合わないけれど、それだけですっきりとヘルシーに完結する食事の感覚なのかもしれない。よくある外食のようにガツンと舌と胃に来ないから、飽きも来ない。 今回のXC60もそう、一言で言うとすっきりとしている。ボルボSPAプラットフォームは登場以来少しずつフロアまわりの微振動が減ってきて、MY2024ではいよいよあらゆる入力がきれいに減衰する完成形になっていた。T6に比べリアの駆動トルクが主張しないB5 AWDの設定もすっきり感につながっている。 通常スタッドレスを履いていると音振関係やハンドリングともに不利なはずなのに、ドライの高速道路で飛ばしてもフラットな挙動を崩さなかった。OEMタイヤのチューニングに凝り過ぎたモデルではこうはいかない。 以前、現行のXC90からはじまる新世代ボルボは商品性こそ高いが、昔からファンが愛してきた質実剛健なボルボとは少し違う、と感じていた。確かに昔とは色々な意味で違っている。 けれどいつまでも飽きがこない優れた道具という立ち位置、北欧らしいイイモノ感は全く変わっていない。それが今回の「長距離走」×2で得られた実感である。
試乗車のスペック
価格:839万円(税込 オプションなし) 全長×全幅×全高:4710×1900×1660mm 燃料消費率:12.2km/L(WLTC) 駆動方式:AWD 車両重量:1900kg パワートレイン:直列4気筒DOHC 1968cc+ターボ 使用燃料:ガソリン 最高出力:250ps/5400~5700rpm 最大トルク:35.7kg-m/1800~4800rpm 電気モーター:交流同期電動機 定格出力:6.1kW 定格電圧:48V 電動機最高出力:8.5kW/3000~8000rpm 電動機最大トルク:2.96kg-m/2250rpm 駆動用バッテリー:リチウムイオン電池 駆動用バッテリー電圧:46.2V 駆動用バッテリー容量:8Ah ギアボックス:8速オートマティック タイヤサイズ:235/55R19(フロント)235/55R19(リア)
吉田拓生(執筆) 小川亮輔(撮影) AUTOCAR JAPAN(編集)