「こんなチームに優勝の資格はない」小宮山悟監督の怒りから始まった早大の復活劇…7季ぶり単独最多47度目V
◆東京六大学春季リーグ戦▽最終週第2日 早大12-2慶大(2日・神宮) 雨天の中、2万8000人が集った早慶戦の第2戦は、早大が19安打12点と慶大に打ち勝ち、2020年秋以来7季ぶり47度目の優勝を決めた。優勝47度は法大を上回りリーグ単独最多。早大が勝ち点5の完全優勝をマークするのは、重信(現巨人)らを擁した15年春以来18季ぶりとなった。10日開幕の全日本大学野球選手権(神宮、東京D=報知新聞社後援)に9年ぶり15度目の出場が決定。9年ぶり6度目の大学日本一を目指す。 6月の雨に打たれながら、笑顔のナインが輪をつくった。小宮山悟監督(58)を取り囲むと、胴上げが始まった。ロッテ時代の背番号にちなみ、14回。「オレは今、背番号30だぞ!」。全5校から勝ち点を奪う完全V。指揮官の目指す“強いワセダ”が7季ぶりに帰ってきた。 「長らくお待たせしました! 秋には3年続けて“あと1つ”で優勝を逃していましたので、この春は何が何でもと。選手たちが毎日、血のにじむような努力をしてくれたおかげで、勝つことができました」。5回表の試合途中では強い雨に襲われ、16分間の中断。悪天候の中、最後まで見届けたファンへ頭を下げた。 屈辱を晴らした。第1戦の8―1に続き、12―2と投打に圧倒。脳裏にはいつも、昨春早慶2回戦での惨敗劇があった。1―15。早慶戦史上、最大得失点差での敗戦だった。「ずっと頭にこびりついていましたから」。あれから丸1年がたち、連日の大勝。今春のチーム打率3割4厘、同防御率1・57はともに6校中トップ。「日替わりでヒーローが出た。いいチームになった」と奮闘をたたえた。 怒りから始まった。「勝った方がV」の昨秋早慶3回戦、神宮での試合前打撃練習。一部4年生の、真剣さを欠く姿勢が許せなかった。「ふざけた態度で球拾いをしていた。捕れもしない打球に頭から飛びついて…。こんなチームに優勝の資格はない」。敗戦後、寮に戻ると3年生以下に訴えた。「野球の神様に『優勝にふさわしい』と資格認定してもらえるようになろう」。新チーム発足後、選手の目の色が変わった。それこそ伝統の「一球入魂」の精神。野球への誠実さを貫いた男たちに、栄冠は輝いた。 主将の印出太一はナインの思いを代弁した。「大学選手権では、監督を日本一の男にして胴上げしたい」。指揮官は返した。「選手権では30回な。そのつもりで腕立て伏せ、やっておけよ!」。紺碧(こんぺき)の空の下、再び宙に舞う。(加藤 弘士)
報知新聞社