福井で石川の被災状況伝え8ヵ月…「能登丼食堂」12月25日に閉店 「役目果たせた。本当にありがたかった」
能登半島地震で甚大な被害が出た石川県奥能登地域のご当地グルメを福井県の福井市中心市街地で提供してきた「能登丼食堂」が12月25日、閉店する。4月のオープンから8カ月にわたり、海山の味とともに被災地の惨状や復興状況を伝えてきた。運営する能登丼事業協業組合の日向文恵理事長(65)は「役目は果たせたと思う。応援してくださったことは、本当にありがたかった」と感謝の思いを一杯一杯に込めている。 奥能登の米や野菜、肉、魚介類にこだわり、輪島塗などの器に盛り付けたオリジナル丼。福井駅西口再開発エリアのフードホール「MINIE(ミニエ)」に出店し、日向さんが中心となって切り盛りしてきた。 「能登牛贅沢(ぜいたく)丼」「能登豚ハイカラ丼」「輪島ふぐの炙(あぶ)り丼」などを提供。冬場に入り、金沢の郷土料理を九頭竜まいたけや上庄里芋、福地鶏で作った「福井じぶ煮」や、能登名物の茶わん豆腐におぼろ昆布をのせた「あんかけ豆腐」など温かいコラボメニューも出している。能登から仕入れたタコやカキ、石川の地酒や能登ワインも楽しめる。 日向さんは、輪島市の山あいで500年以上の歴史がある慶願(きょうがん)寺の渡り廊下や庭を生かしたオープンカフェ「木の音(こえ)」を営み、能登丼を提供してきた。地震で渡り廊下や庫裏は全壊、本堂も大きく損傷した。家族は東京に避難中で、日向さんは福井市に単身赴任。地震発生から1年となることから「能登に帰って片付けしたり、今後について見つめ直したりしたい」と閉店を決めた。当面は金沢市に住みながら輪島市に通って復旧作業をするという。 能登丼食堂には福井県民や観光客に加え、石川県の馳浩知事らも来店。「木の音」を訪れた人も東京や愛知などから駆けつけた。「福井の人をはじめ、県外からも能登丼を食べに来て、応援してくれたことがありがたく、うれしく思う。一生忘れない」と日向さん。奥能登はこの1年で豪雨や余震にも見舞われたが、「お客さん一人一人の顔を思い浮かべて頑張っていきたい」と前を向く。 能登丼食堂の営業は午前11時~午後11時(午後2時半~同5時は休憩)。月曜定休。
福井新聞社