福岡で非電化区間を「電車」が走る?海の中道を駆け抜ける「DENCHA」に注目! JR九州・香椎線
◆羽川英樹の出発進行! 今回はJR九州が開発した次世代型車両「DENCHA」が走るJR香椎(かしい)線を取り上げます。香椎線は『西戸崎』(さいとざき)から鹿児島本線と接続する『香椎』を経て、『宇美』までの25.4kmの路線で、別名「海の中道線」とも呼ばれています。 【動画】鉄アナが取材レポート! JR九州・香椎線を「DENCHA」で行く! ここにBEC819系「DENCHA」が2019年に導入されました。これが国内初の架線式蓄電池電車なんです。「DENCHA」は非電化区間でも走れるように架線からパンタグラムで電気を取り込みます。ブレーキをかけた時のエネルギーも含め、車体の下にあるたくさんの蓄電池にチャージしていくというシステムです。 「DUAL ENERGY CHARGE TRAIN」の略で、かわいらしい名称が特長的な「DENCHA」。香椎線のような非電化区間ではパンタを下げて運行しますが、10分間の充電で90kmの距離は走れるようです。 メリットはエンジンの騒音・振動・排気ガスがなく、メンテナンス費も削減できること。2016年に筑豊本線(折尾~若松)の非電化区間に最初に導入され、翌年ブルーリボン賞も受賞しています。 この列車はJR九州とは縁が深い車両デザインの第一人者・水戸岡鋭治氏がデザインを担当。車体前面は精悍(せいかん)なブラック、側面には「DENCHA」のおしゃれなロゴが入り、ボディは白、ドアには爽やかなブルーというカラーリングです。 車内はロングシートですが、ブルー主体のポップなデザイン。ドアまわりには「特急あそぼーい!」で登場のJR九州のキャラクター「くろちゃん」がいたり、小さなゴミ箱や木のテーブルがあったりするなど、遊び心いっぱいです。 それでは、香椎線の起点であり、海の中道の突端に近い『西戸崎』から乗り込みましょう。この駅は、もともと輸出用の石炭積み出し駅。そして国宝の金印が発見されたあの志賀島へのバスや航路のアクセス駅でもあります。 では、その『西戸崎』から出発進行! スタートの加速はそんなによくありませんが、あの気動車独特のうなるようなディーゼル音や振動はまったくなく、とてもスムーズな発進。日中は香椎に向けて30分おきの運行となっています。 すぐに線路は背の高い木に覆われて林の中を走っているような錯覚に陥りますが、実は左は玄界灘、右は博多湾に挟まれて、海のすぐ横を走っているんです。 最初の駅『海ノ中道』に到着。ここは福岡の一大リゾートエリアで、自然豊かで広大な海浜公園をはじめ、イルカショーが人気の「マリンワールド海の中道」のほか、リゾートホテル・グランピングなどが集まり、週末は多くの客が訪れます。 『海ノ中道』を出ると次の『雁ノ巣』までは砂州の上を豪快に走っていきます。そして『奈多』あたりから急に民家や団地が増え始めます。 『和白』は海側にマンション、山側に商店街がひろがり、中学・高校だけでなく、最寄りに令和健康科学大学もあるため、多くの学生も利用します。 そしてここで貝塚~西鉄新宮の11kmを結ぶ「西鉄貝塚線」と連絡します。かつては宮地岳(みやじだけ)線を名乗っていた路線は、この5月に開業100周年を迎えました。それを記念して登場したのが、西鉄電車の人気キャラクター「ガタンコ」と「ゴトンコ」が描かれている楽しげな車両。500形にラッピングを施した100周年記念号です。 そしてマンション群がみえてきたら、まもなく福岡の副都心で東区の中心である『香椎』に到着です。香椎線は直通する列車はなく、この駅で西戸崎行きと宇美行きとに分断されます。 この『香椎』で鹿児島本線と接続し、西に4駅行くと『博多』です。それにしてもJR九州の車両は水戸岡鋭治氏と組んで、みんな色がビビッド。すれちがった折尾行の普通列車813系も、赤が効果的に配された車両です。 3番線には乗ってきた列車からバトンを受けた香椎発宇美行きの「DENCHA」がチャージを終えて出発していきます。この香椎線は起点の『西戸崎』、終点の『宇美』の両駅とも、他の路線と接続がなく行き止まりという全国でも珍しい路線です。ぜひ一度、国内初の架線式蓄電池電車「DENCHA」に乗って、海の中道を訪ねてみてください。国内では非電化区間を電車で走るという珍しい体験は、この香椎線を始め筑豊本線(若松線区間)のほか、JR東日本の男鹿線・烏山線でもできるようです。(羽川英樹)
ラジオ関西