「30km走は『枯渇』で細胞を刺激する」元五輪代表&理論派コーチが語る
30km走は「スモールマラソン」 シミュレーションに最適
編集部 これを踏まえて、30km走はどのようなトレーニング効果があるといえますか。 藤原 グリコーゲンを枯渇させることで、細胞に刺激を入れられると思います。もちろん完全に枯渇するわけではありませんが、刺激が入るレベルまでは下がるというか。それによってミトコンドリアが増える、脂肪をエネルギーにする能力が向上するなど、様々な効果があると思います。 中田 藤原さんの話した効果に加え、30km走はマラソンに近いけれど、フルより疲労が少ない「スモールマラソン」として本番のシミュレーションにもなります。最後まで一定のペースで走るとか、どのぐらいの追い込み具合だったらしっかり走り切れるだとか、マラソンに近い条件でいろいろなことを試すことが可能です。ウエアやシューズもそうですね。その日の気温の場合、選んだウエアでちゃんと走り切れるか。本番用シューズの疲労感はどれくらいになるか。スタート前に思ったことがゴールの時にできているかをテストすることができます。 編集部 今回のデータのように、後半失速してしまっても練習としては効果があるのですか? 藤原 失速したということは、グリコーゲンが枯渇して細胞に刺激を与えられているということです。もちろんあまり早い段階で失速するのは良くないですが、20kmぐらいまでキロ4分15秒で走って、その後5分とか5分30秒に落ちて完走したというのであれば、それはとても良いトレーニングになっていると思います。
プロフィール
藤原新(ふじわら・あらた) スズキACヘッドコーチ。ロンドン五輪マラソン日本代表。拓殖大学からJR東日本に進み、その後男子としてはプロランナーの先駆けとなった。2012年東京マラソンでは2時間7分48秒で2位に入った。 中田崇志(なかた・たかし) マラソン完走クラブ主宰。一般企業に勤務しながらランニングコーチとしても活動する。ブライドランナーの伴走者として、パラリンピックで2度メダル獲得。今年の別府大分マラソンは2時間29分16秒だった。