新幹線で北陸は一つ 金沢―敦賀、本社記者試乗ルポ
●「頑張れ、能登」の声多く 2015年2月、長野-金沢の北陸新幹線に試乗した時、空は青く晴れ渡っていた。あれから9年、24年2月1日。くしくも能登半島地震から1カ月の日の空は、冬の北陸らしく、どんよりと曇っていた。それでも、敦賀-金沢を往復する2時間足らずの試乗の旅で、「頑張れ、能登」の力強い声をたしかに聞いた。(編集委員・坂内良明) 【写真】集結した沿線自治体のマスコットキャラクター=JR敦賀駅 午前10時前の敦賀駅改札口に、福井、石川両県のご当地キャラが、ずらりと勢ぞろいしていた。のどかな風景を眺めながら、気分は晴れない。能登が大変だというのに、新幹線に乗っていて、いいのか。 「珠洲市へ入りましたよ」。観光ブースで、そんな言葉を掛けられた。 福井県嶺南振興局の伊川勇生さんは1月5日に、奥能登に支援に赴いたという。避難所運営のサポートに5日間、取り組んだ。 「敦賀開業を機に、北陸全体が元気になってほしい」。そう語る伊川さんの背後に、若狭湾の観光キャッチフレーズ「青々吉日(あおあおきちじつ)」が躍る。希望あふれる、いい言葉だ。 ●わずか55分で金沢 わずか55分で、列車は金沢に着いた。車窓の景色を楽しむ暇もない。折り返しの敦賀行きに乗る。 水田と、工場と、住宅と、イオン。加賀平野は広々としている。平地の少ない能登とは、景色が違う。 トンネルを抜けると、もう敦賀だった。山の向こうに、湾が見える。「能登みたいだ」と思った。 「われわれも、盛り上げたい、と思ってるんです」 新幹線に同乗していた、「楽天トラベルガイド」大阪編集チームの立川杏子さんが語る。3月1日にウェブ上で、北陸新幹線の特集ページをアップするという。「ちょうど政府も北陸割をするというし、なんとか能登を応援したいですね」 その思いがうれしい。とかみしめる間もなく、列車は敦賀駅に到着した。 「あわら温泉も、液状化で大変なんですよ。ホテルは軒並みキャンセルです」。テレビの映像を見ながら、敦賀市内の居酒屋の店主がつぶやいた。 地震から、1カ月。「再出発なんか、考えられない」。テレビで、妻と娘を亡くした輪島の男性が、言葉を絞り出す。思わず涙が出た。カウンターの向こうの店主も、まぶたを拭っていた。 北陸は、一つ。鉄路でつながるみんなが、能登の復興を願っている。 ●「石川全体の復興に」宮橋小松市長 小松市の宮橋勝栄市長は「木場潟がきれいに見えた。天気が悪く、次に白山を見る楽しみができた」と語った。能登半島地震の影響について「新しい時代を迎える準備はしっかりと行っている。小松の経済を盛り上げ、石川全体の復興につなげたい」と力を込めた。 ●「誘客促進しっかり」宮元加賀市長 加賀市の宮元陸市長は「車窓の景色を写真に収める暇もなく、敦賀まであっという間だった」と驚いた。加賀温泉郷に多くの人が運ばれる期待が増したとし、「能登半島地震の被災者支援と同時並行で、誘客促進にもしっかり取り組んでいきたい」と述べた。 ●姫御前がアピール カブッキーも盛り上げ 敦賀駅に設けられた小松市のPRブースでは、小松の観光大使「2023こまつ姫御前」の浜桜子さん(23)が駅利用客らに観光パンフレットを手渡し、笑顔で小松の魅力をアピールした。市のイメージキャラクター「カブッキー」も参加し、沿線自治体のマスコットキャラクターとともに盛り上げた。