愛知で高校生+プロの本格演劇 高校生演劇の魅力とは
愛知で高校生+プロの本格演劇 高校生演劇の魅力とは THEPAGE愛知 音楽:むんむ
オーディションで選ばれた現役高校生16人が、プロの演出家たちと取り組む演劇公演「赤鬼」が11月7日から2日間、愛知県豊橋市の穂の国とよはし芸術劇場PLAT(プラット)で行われる。全員高校生の出演者をプロのスタッフがサポートし、観客からチケット代金をもらう本格的な演劇の取り組みは、県内では珍しく、注目を集めている。公演を前にして稽古に熱が入る出演者や関係者に、公演への思いや、取り組みの魅力を聞いた。
「赤鬼」は劇作家の野田秀樹氏の作品
この取り組みは、芸術文化の発展を地域活性化につなげようと、同劇場が2014年度から始めた。初年度は「穂の国の転校生」(作=平田オリザ、演出=広田淳一)を3日間で全5回上演し、述べ831人が見に訪れた。 本年度の「赤鬼」は、劇作家の野田秀樹氏の作品で、閉鎖的な集落に部外者の“赤鬼”がやってきて事件が起きるという物語。ダンスのような身体表現や、出演者自ら道具を使って音を出す効果音の演出、衣装パーツ製作など、高校生による表現の可能性を探る。出演は、豊橋市を中心とした愛知県東三河地方の高校生16(女子14、男子2)人。 主役級の「あの女」役に起用された白井風菜さん(17)は「練習でも常に初演という意識で、単なる練習の繰り返しにならないようにしている」と、演技に磨きをかける。今回プロのスタッフから学んだことについては「自分の演技で共演者に影響を与えて共鳴しあって、空間を創りあげていくこと。その響きがお客さんにも伝わればうれしい」と意気込み、夢である舞台女優に向けて先を見据えた。
高校生らしさを演劇に生かしたい
高校で演劇部に所属する野元結水さん(16)は「物語やせりふの意味など、普段の部活より、何百倍も深く考えるようになった」と新しい学びを得たことに喜ぶ。「他の出演者を見ていると、自分から積極的に発言や行動する人が多かったので、自分もするようにした」と、自分の成長にもつながったという。 高校生と創り上げる本格的な演劇は「初めて」という、演出担当の黒澤世莉さん(39)は「大人にはない生命力が、高校生にはある」と高校生演劇の魅力を語る。 黒澤さんは、東京を拠点に活動する劇団「時間堂」の主宰で、新国立劇場演劇研修所などで指導者としても活躍する。本公演の指導では、「特別な高校生扱いせず」に、出演者と密にコミュニケーションを図ることに重点を置く。 「大人は、失敗しても人前ではほとんど泣かない。だけど、高校生はうまく演じられないと言ってその場で泣く。悔しい気持ちが純粋に出てくるからで、そういうイノセンス(無邪気、天真らんまんさ)みたいな高校生らしさを演劇に生かしたい。大人はそのサポートに徹する」と、力を込めた。
成功体験を、今後の人生に生かしてほしい
参加する高校生に対して黒澤さんは「成功体験を味わって欲しい」と思いを語る。「大人になってからの頑張りの原動力は、子ども時代の成功体験とされている。今回のような子どもと大人が一つの目標に向かって演劇を創りあげることはなかなかない。そんな特別な場での成功体験を、今後の人生に生かして欲しい」と期待する。 出演者たちで考えた目標は、同劇場プラットでナンバー1の芝居を創るという意味の造語「プライチ」。高校生+プロという新しい演劇の最終的な答えは、本番の舞台にある。 (斉藤理/MOTIVA)