銀行業界に追い風、「金利ある世界」到来-稼ぎにくさは変わらず
(ブルームバーグ): 日本銀行がマイナス金利政策の解除に踏み切った。「金利のある世界」の到来は、逆境に長くさらされてきた金融機関にとって追い風だ。ただ日銀は当面、緩和的な金融政策を続ける見通しで、稼ぎにくい環境から直ちに脱却できる訳ではない。
17年ぶりの利上げで最も好影響を受けるのは銀行業界だ。みずほフィナンシャルグループの木原正裕社長は、運用と調達の利ざや改善など「ビジネスにポジティブ」と政策変更を評価。三菱UFJ銀行の半沢淳一頭取は「金利正常化に向けた動き」とし、三井住友銀行の福留朗裕頭取も「日本経済が新たな成長の軌道に入っていく大きな転換点」と歓迎した。
国内3メガ銀行グループはすでに利上げの影響額を試算。詳細の条件は異なるが、政策金利ゼロ%の場合、資金利益やそれに準ずる項目への影響は年間で三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が450億円程度、三井住友フィナンシャルグループが420億円程度、みずほFGは350億円程度の押し上げ効果をそれぞれ見込む。
今回、政策金利の誘導目標は0-0.1%に設定されたため、この金額は上振れる公算が高い。ただ、政策金利はまだ低水準にとどまっており、金利で稼ぐ力が決算上の純利益の底上げに貢献するには時間がかかりそうだ。
日銀に預けている当座預金に21日から年0.1%の利息が付くことも決まり、残高があれば新たな収入となる。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは1日付リポートで、1月時点の当座預金規模で、超過準備金すべてに0.1%が適用されると「利子収入は1年間で2500億円程度増加する」と試算している。
国内貸出金利ざや
3メガ銀は超低金利環境の中、M&A(企業の合併・買収)などの手数料ビジネスや「非銀行分野」の拡大などで収益を底上げしてきたが、利ざやも改善傾向にある。特に日銀がイールドカーブコントロール(長短金利操作、YCC)を柔軟化した昨夏以降、その動きは顕著だ。