3-0も危険スコア? 欧州日本人対決で大逆転劇…「雰囲気良くない」→奇跡Vが実現した訳【現地発コラム】
送ったクロス41本…シンプルかつ効果的な策を徹底
ボーフムにとって、チームとして可能性はまだあると思えるラインを保てたことが1点。そしてよくこうした展開だと一か八かのがむしゃらサッカーに振り切ってしまい、逆にプレーがちぐはぐになってしまうケースもあるが、そうではなく、やるべきプレーをチームとして整理して、徹底してやり切ったことが大きい。 「ボーフムにはなかなか崩す力というのはないのかなとは思いますけど、思い切って、クロスをどんどんどんどん上げていって、それがゴールにつながったと。今まではゴールにつながらなかったり、つながらなかったら、ちょっとマイナスな雰囲気が流れてきたりというのはありましたけど、今日はやるしかなかった。みんなが自信じゃないですけども、本当に失うものがない気持ちでプレーできてたのかなと思います」(浅野) この試合、延長戦を含めてボーフムがエリア内に送ったクロスの数は41本。そしてうち27%がボーフムの選手に届いている。長身FWフィリップ・ホフマンをターゲットに、どんどんセカンドボールを回収するというシンプルかつ効果的な策が見事にはまる。 後半13分から途中出場した浅野もゴリゴリのドリブルからどんどんクロスを上げ、逆サイドからのクロスには迷うことなく飛び込んで惜しいチャンスに絡み続けた。2点目、3点目が生まれたのが浅野途中出場後というのが興味深い。 3-0も危険なスコアという常識がサッカー界には浸透していくのかもしれない。 [著者プロフィール] 中野吉之伴(なかの・きちのすけ)/1977年生まれ。ドイツ・フライブルク在住のサッカー育成指導者。グラスルーツの育成エキスパートになるべく渡独し、ドイツサッカー協会公認A級ライセンス(UEFA-Aレベル)所得。SCフライブルクU-15で研修を積み、地域に密着したドイツのさまざまなサッカークラブで20年以上の育成・指導者キャリアを持つ。育成・指導者関連の記事を多数執筆するほか、ブンデスリーガをはじめ周辺諸国への現地取材を精力的に行っている。著書『ドイツの子どもは審判なしでサッカーをする』(ナツメ社)、『世界王者ドイツ年代別トレーニングの教科書』(カンゼン)。
中野吉之伴 / Kichinosuke Nakano