被団協のノーベル平和賞から1カ月 長崎の被爆2世、若者…次世代の思い 自問自答重ね、できることを
日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が今年のノーベル平和賞に決まり、11日で1カ月。授賞理由では被爆者の長年にわたる活動に加え、経験や証言が次世代に引き継がれていることが評価された。長崎の被爆2世や若者らはどう受け止め、行動につなげていくのか。 長崎被災協・被爆二世の会・諫早の事務局長、大宮美喜夫さん(56)は「喜びとともに、重責を感じた」と振り返る。2012年に入会。学校への出前講座や慰霊碑の清掃、救護被爆者の紙芝居制作など活動を支えている。「一瞬で生き物全ての命を奪う原爆はあってはならない。被爆者の声を伝えなければ」。根底にはこうした思いがある。 4歳で被爆した父(83)は当時、逃げ込んだ防空壕(ごう)に大勢のけが人が運ばれる惨状を目の当たりにした。戦後は真夜中にうなされるなどトラウマ(心的外傷)に苦しみ、今も体験を多くは語らない。原爆の影響に当事者意識を抱くからこそ活動には熱が入る。 課題は活動が広がらないこと。会員数は発足時の約120人から30人ほどしか増えず、交流サイト(SNS)で発信しても反応は少ない。「やって満足になってはいけない。一般市民にも広げ、日本の核兵器禁止条約批准といった大きな動きにつなげたい」。自問自答を重ねながら活動を続ける。 ◆ 「2世でない私がやってもいいのかな」。核兵器廃絶地球市民長崎集会実行委員会の甲斐一美さん(65)=長崎市=は、被爆者の廣瀬方人さん(故人)との出会いを機に平和活動を始めたが、当初は葛藤があった。 ボランティアガイドを皮切りに、被爆体験記の朗読グループ、核兵器廃絶をテーマにした市民参加型イベントの運営など活動は多岐にわたる。「平和を願う気持ちに2世・3世かどうかは関係ない」。被爆者とさまざまな世代が関わり合った多様な平和活動に関わるにつれ、葛藤は消え去った。「すそ野がどんどん広がっている。それぞれのできることをすればいい」 ◆ ノーベル委員会は授賞理由で日本の新たな世代を次のように評価した。 「被爆者の経験とメッセージを引き継ぎ、世界中の人々を鼓舞し、教育している。(核兵器の使用は道徳的に許されないという)“核のタブー”を維持することに貢献している」 ただ、県国際課で平和推進などの分野を担当する福永楓さん(27)は、次世代の活動に警鐘を鳴らしたと受け止めた。長崎大大学院時代には世界の核情勢を学ぶ「ナガサキ・ユース代表団」に所属。被爆証言を聞き、国際会議などに参加した。今も学校での出前講座などに取り組んでいる。 就職活動や進学のためのアピール材料として平和活動に参加する若者も一部いて、一概に悪いとは思わないが「被爆者の言葉の意味を本気で考え、活動に力を入れる層を増やさなければ」と指摘する。 教育分野にも関心があり「核兵器に関する想像力、思考力、知識を養う教育プログラムが普遍化していくことが大事。志のある若者が増えることが、被爆者の声を引き継ぐ土台になる」と考えている。