「梅吉よ、泣かないで」『ブギウギ』大阪パートの柳葉敏郎の明るさと悲しさ
天真爛漫な笑顔に夢中!
朝の連続テレビ小説『ブギウギ』にハマっている。もっといえば、柳葉敏郎、ギバちゃん演じるお父ちゃん、花田梅吉にハマっている。ええオッサンなのだが、まるで夢を追う少年のよう。ガハーッという音が聴こえそうな天真爛漫な笑顔にズッキュン射貫かれ、心がステップしまくりである。 【画像】映画「踊る大捜査線THE MOVIE3」の製作会見に出席した際の柳葉敏郎さん。ほとばしる室井の圧。 しっかり者のツヤに頭が上がらず、軟体動物の如くふにゃふにゃと銭湯の脱衣所を転げまわり、テキトーなことを言い、常連客と酒を飲む。映画の脚本を書いて懸賞に応募するが、正直モノにはならなそうだ。 でも、周りにカッコ悪いところも弱いところも全部見せ、そのあとは脳天がパッカーンと開くような笑顔でリセットする。なにかあるごとにツヤに甘え、子どもを抱きしめる全力の家族バカっぷりを、顔に何本も皺を入れながら演じるギバちゃんが愛し過ぎるのだ。ナチュラルに関西弁を操り、抜群のスタイルで法被をヘロヘロに着崩し。ほんの少し残るトレンディ臭が良い仕事をし、梅吉のデリカシーのなさ、くどさを愛嬌に変えている。クーッ、ナーイスバランスッ! 東京編に入っても、たくさん梅吉が登場しますように。そう祈ったところ、天がNHKにつないでくれたのか、第8週の予告では(11月17日現在)大阪のシーンがたくさん! でも、なんだか不穏。戦争の足音が聞こえ、六郎に赤紙がきて、ツヤの病が重くなり、梅吉が泣いている。お願い、梅吉泣かないで……。 まさか朝8時から、ギバちゃんの表情に一喜一憂する日が来ようとは思わなかった。
衝撃だった一世風靡セピア
思い返してみれば、柳葉敏郎については、昔からいろいろ気にはなっていた。初めて彼を観たのは、確か『欽ドン! 良い子悪い子普通の子おまけの子』(1983年)の良川先生役。メガネ姿と秋田弁で、ほのぼのコントを披露していた。ところがその後彼は、一世風靡セピアの中心メンバー、ジョニーとして人気者になるのだ。アグレッシブに飛んだり跳ねたりしながら歌う姿は超イケており、驚いたものである。 一世風靡セピアは大ヒット曲「前略、道の上より」(1984年)も良かったが、私は1988年の9thシングル「汚れつちまった悲しみに...」という歌が忘れられない。バンカラで最高に粋なのだ! 昔は、「汚れつちまった悲しみに...」というワードを見れば、自然と中原中也の詩が浮かび、「今日も小雪の降りかかる 汚れつちまつた悲しみに 今日も風さへ吹きすぎる……」とスラスラ口から出てきたものだ。 ところが一世風靡セピアの曲を聴いて以降、 「俺の青春もナンボのもんじゃい!」 と彼らの歌の歌詞が真っ先に浮かぶようになり、中原中也の詩をスッカリ忘れてしまった。一世風靡セピア、ある意味、罪な男たちである。