「利便性より安全第一」…交通や小売りで早まる休業判断にも苦情なし 台風10号直撃で分かった、防災意識の高まり
過去最強クラスに発達した台風10号は、鹿児島県内の生活に欠かせない社会インフラをまひさせた。JRやバスといった交通機関は軒並み運休。スーパーやコンビニも早めの休業に踏み切った。利用者や従業員の安全確保を重視した対応が広がっている。 【写真】〈別カット〉九州新幹線の計画運休を知らせる紙を掲示板に貼るJR九州の駅員=29日、鹿児島市の鹿児島中央駅
南九州ファミリーマートは、暴風域が県本土に接近する28日夜から順次休業した。「避難指示発令」を受け、従業員や客の安全を考慮して判断したという。 ローソンは29日、200店舗中140店舗で休業した。災害時は各店舗に臨機応変な判断を求める。担当者は「立地によって状況が異なり、本部に許可を取っている時間はない」と理由を説明する。 スーパーは対応が分かれた。イオンモール鹿児島などを展開するイオン九州は28日午後から各店舗の判断で時短営業とした。従業員の通勤に配慮し、29日は県本土の全店が閉めた。 一方、ニシムタはパンや水、防災用品などの品ぞろえを充実し、通常通り営業。来店は少なかったが、カップ麺や飲料品が売れた。企画販促課の竹井克康課長(46)は「コンビニも閉まり、困っている人もいた。地域住民のライフラインとして、可能な範囲で営業することも必要だ」と話した。 鹿児島第一交通の中迎和弘営業所長(63)は「台風が近づくとタクシーは稼ぎ時だったが、この異常気象では無理はさせられない」と強調する。28日夜から県内での営業を停止。人命優先の動きはタクシー事業者にも浸透しつつある。
JR九州鹿児島支社によると、県内の在来線は29日から終日運休。線路破損などの点検のため31日も始発から運転を見合わせる。担当者は「ご不便をかけるが、安全運行には代えられない」。 28日夕から運休した南国交通バス。鹿児島営業所の担当者は「運休に対する苦情はない」とし、社会全体の防災意識の変化を実感する。 鹿児島市営バスと市電は風速の基準に従い、28日から運休。鹿児島市役所は29日の業務を停止した。平日の閉館は戦後初とみられる。市民の安全確保を最優先にしようと、下鶴隆央市長が決定した。市総務課によると、閉館に関するトラブルや苦情はなかった。 生活インフラを直撃した台風10号。食料備蓄など日頃からの備えの重要性をより浮き彫りにした。
南日本新聞 | 鹿児島