「怪優の演技力がすごい…」思考が活性化するパズル映画(4)ほぼ表情のみ…映画から人生を考える意欲作は?
今回はパズルのように緻密で複雑なストーリーが特徴の、観るだけで頭が良くなりそうな作品を5本セレクト。列車爆破阻止のミッションに挑むタイムリープ、記憶喪失の男と身に覚えのない殺人…。予想できない展開や幾通りも可能な解釈に、脳がフル回転する作品たちを紹介する。今回は第4回。
『宮松と山下』(2022)
上映時間:87分 製作国:日本 監督:関友太郎、平瀬謙太朗、佐藤雅彦 脚本:関友太郎、平瀬謙太朗、佐藤雅彦 キャスト: 香川照之(市川中車)、津田寛治、尾美としのり、野波麻帆、大鶴義丹、尾上寛之、諏訪太朗、黒田大輔、中越典子 【作品内容】 主人公・宮松は、殺され役として数々の撮影現場を渡り歩くエキストラ俳優。ある日は矢に撃たれ、ある日は銃で撃たれ…と、作品の中で死を演じ続ける。と、そんな宮松は、実は過去の記憶を失っていた。 【注目ポイント】 本作は、『ピタゴラスイッチ』で知られるメディアクリエイター・佐藤雅彦と、連続テレビ小説『マッサン』の演出を手がけた関友太郎、数々のメディアデザインを手がける平瀬謙太朗の3名からなる監督集団『5月』による異色作。主演の宮松は香川照之が演じる。 『八芳園』や『どちらを』など、映像の新たな面白さを探る短編作品を数多く発表し、カンヌ国際映画祭の短編部門にも2度出品されている佐藤ら。初の長編作品となる本作では、「メタ映画」というテーマのもと、虚構と現実が入り混じる独特の作品世界が描かれており、ある意味彼らの活動の総決算と言えるだろう。 注目は、香川の演技。『半沢直樹』の大和田常務をはじめ、これまでアクの強い怪演を求められてきた彼だが、本作では一転、「何者でもない存在」を、ほぼ表情のみで演じており、彼自身の新境地とも言える作品となっている。
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