対話で学び広げよう メンタルヘルス向上図る「リカバリーカレッジ」運営団体が集結
メンタルヘルスの向上を図る英国発祥の講座「リカバリーカレッジ(RC)」を運営する全国各地の団体が集まる文化祭が8日、都内で開かれた。各地の有志が遠方の有志と企画して六つの講座を開き、100人超の参加者がRCの中核をなす「対話を通じた学び」という価値観を共有した。主催したリカバリーカレッジおおた(山田悠平代表、東京)によると、RCは国内に約20団体あり、今後、その取り組みをさらに広げたいとしている。 六つの講座の一つ、「自分だけのかるたを作ろう」は宮城、神戸、佐賀の当事者や学識者が企画・運営。母を亡くしたばかりという受講生は「『さ』はさよならではなく『行ってらっしゃい』」という読み札を作り、その意味を説明しながら描いた絵札も披露した。 それを聞いたほかの受講生は感想を述べ合い、順番に自分のかるたを説明する。「今日、ここに来るのに久々に電車に乗ったら吐きそうだった。それでもかるたを作るうちに元気になった」と笑顔を見せる受講生もいた。 RCは精神疾患を経験した当事者、医療・福祉従事者、市民が対等に学び合う活動やその拠点のこと。当事者が講師や運営スタッフを務めることもある。2009年に英国が国策として始めた。 日本では13年に東京都三鷹市内に第1号が発足。有料の講座もあるものの、多くは障害福祉事業所や公民館などを会場に手弁当で運営される。RCの効果は当事者だけでなく地域社会にも及ぶと評価され、この10年で急速に団体が増えた。 発達障害の男性(福島県)と一緒に文化祭に参加した福島県立医大の田村達弥助教(精神看護学)は、県内にRCをつくろうと4年前に準備を開始。「RCは医療や福祉を提供する側の管理的なマインドを変えると思う」とし、視察のため渡英する予定だという。 高知県立大を拠点とするRC高知は、文部科学省のモデル事業に採択されるなど、RCは日本でも政策テーマに載るようになった。文化祭の講座運営に携わった栄セツコ桃山学院大教授(精神保健福祉論)は「RCで最も大切なのは対話だ」としている。