「不倫現場を見られた気持ちに」 岡田将生が“婚外恋愛許可制“を演じ これまでになく感傷的になった理由
自分の言葉選びを後悔した日
――岡田さん自身も、自分のダメなところや弱さを振り返ることはありますか? 僕にもダメなところはありますね……。こういう取材の場でも失礼なことを言ってしまって、後悔することもあります。「なんであんな言葉選びをしてしまったんだろう」って。でも、後悔しながら生きてくことも大切なんじゃないかなと思います。 ――岡田さん自身は、「弱さ」をどう捉えられていますか? 僕自身は親しい友人や家族に対して、わりと弱音を吐くことも多いほうですね。今、こういうことで悩んでいて、こういう問題が自分の中で起こっているということは、なるべく早く解決したいと思うほうなんです。なので、友人に相談に乗ってもらって、自分の中での比重を軽くしている感じです。そうじゃないと、引きずってしまいがちなんです。 ――岡田さんがこのドラマを演じた上で、「いい夫婦」とはどういうものだと思われましたか? その夫婦によって「いい夫婦」というものは違うものだと思いました。この作品は一子と二也の夫婦の話であって、ほかの夫婦だったらまた違う「いい夫婦」になるんじゃないですか。僕自身は、「いい夫婦」っていう形を、二人で探していくというのがいいんじゃないかなと思いました。
不倫現場を見られたような気持ちに
――それにしても、二也が美月に剣山で刺されるシーンは、原作で知っていても、声が出るくらいびっくりしました。 剣山が出てくるシーンは、丸一日かけて撮影していたんです。その日、出番のない高畑さんが差し入れを持ってきてくれたんですが、高畑さんが来ると、一子に不倫現場を見られたような気持ちになってしまって……(笑)。それを高畑さんも察したのか、差し入れを渡したらすぐに帰っていかれました。去っていく高畑さんに申し訳ない気持ちになりました(笑)。 ――説妙なバランスの必要なシーンでもありますよね。 剣山のシーンについては、今泉監督もすごく悩んでいました。どんな風に演じることが正解か、なかなかわからなかったんです。二也がみじめに見えるので、結果的に笑えるという風に演じたらいいのか、それとももっとシリアスな感じで行くのがいいのか、そのバランスで監督は悩まれていたんですけど、いざやってみたら「こんな面白いシーンはないですよね!」ということになりました。だって二也は刺されたのに「大丈夫、大丈夫」って意味のわからない強がりを見せたうえに刺した美月を気遣う優しさもある。このシーンには、二也の強さと弱さの両方が滲み出ていて、結局は、このバランスで大丈夫なんじゃないかなっていうところに行きつきました。今泉さんの映画は、どの映画でもそういう絶妙なバランスがあって、だからこそ面白いんだと思いました。今まで映画を見ていて感じていたことが、実際に撮影してみて体感としてわかったことも良かったですね。 ――どんなに酷いことをされても許せるところが、二也の「強さ」なのかもしれないですね。 刺されたら男性の機能を失う可能性だってあるようなことが起こりましたからね。全体を通して、二也というのは、優しくて他者を許せる人間として描かれていたので、なかなかそんな人って、いない存在なのかなって思いました。 岡田将生(おかだ・まさき) 1989年8月15日生まれ、東京都出身。2006年に俳優デビュー。近年の主な出演作として映画『ドライブ・マイ・カー』(2021)、『1秒先の彼』(2023)、ドラマ『大豆田とわ子と三人の元夫』(2021)、『ザ・トラベルナース』(2022)『ゆとりですがなにかインターナショナル』(2023)などがある。映画『ラストマイル』が8月23日公開予定。
西森路代