フェニックス・リーグを視察した阪神・藤川球児監督＝ひなたひむかスタジアム

【球界ここだけの話】自分の苦悩時代をだぶらせたのか。阪神・藤川球児新監督（44）は15日に大阪市内のホテルで就任会見に臨むと、17日からは1泊2日で、みやざきフェニックス・リーグを視察。2人の右腕を11月の秋季キャンプ（高知・安芸）で直接指導する考えを明かした。 【写真】一緒にラーメンを食べる阪神・才木浩人と大竹耕太郎 「『改善ができるな』というふうには正直、思いましたね。同じ投手として」 18日のDeNA戦（ひむか）。先発して5回3失点だった高卒5年目右腕・西純、2番手で登板し、2回3失点とアピールできなかった椎葉だ。指揮官は「それ（指摘）を受け入れて、次の春（季キャンプ）を違う形で迎えたいと思うことまで見据えることができたら」と付け加えることも忘れなかった。 椎葉は即戦力ルーキーと期待されながらも今季1軍登板はなし。西純は2020年にドラフト1位で入団。高卒5年目の今季も1軍登板は4試合にとどまった。20年前の自分の立場と似ている。1999年にドラフト1位で入団したが、プロの壁を破れず、苦悩の日々が続いた。戦力外リストに入った04年、監督に就任したばかりの岡田監督が「短いイニングで使える」と〝待った〟をかけ、先発から救援に転向。そこからサクセスストーリーが始まった。 以前、藤川監督の現役時代に投球フォーム改造をアドバイスし、〝火の玉ストレート〟誕生の〝生みの親〟と呼ばれた山口高志氏（現関大硬式野球部アドバイザリースタッフ）は、こんな話をしてくれた。 「当時、私は2軍投手コーチでしたが、球児は休日も鳴尾浜（2軍施設）で黙々と練習をしていたと（寮関係者から）聞いた。何年も結果を残せない選手の多くは休日は遊んでいた。そこがプロで大成するかの違い。球児がいい例だった」 先発では結果を残せなかったが、日米通算245セーブを記録。救援投手の地位向上に大きく貢献した。20年の引退会見で涙がとまらず、何度も言葉を詰まらせていたのを覚えている。当時の記事を読み直した。印象に残ったフレーズは「苦しかったけど、僕。自分に勝ちましたからね。だから（プロ生活は）楽しかった、でいいんじゃないですか。たくさんの方に藤川球児という人を知ってもらえた」。 戦力外寸前から日本を代表する守護神となり、メジャーのマウンドにも立った指揮官の助言は、すべてが金言。西純や椎葉はもちろん、同じ高知県出身で、高卒3年目のドラ1右腕・森木、同8年目の浜地ら伸び悩む本格派右腕は藤川監督との出会いを生まれ変わるきっかけにしてほしい。（三木建次）