稲引き・樽引き神事 勇壮に炎舞い 5年ぶり完全復活 布団だんじり巡行も 加茂神社の秋祭り 三田
吹く風に、ようやく秋の気配が漂う。今年も三田に秋祭りの季節がやってきた。5、6日、加茂神社(兵庫県三田市加茂)で「秋の大祭」があり、初日の宵宮では市内唯一の火祭り「稲引(いなひ)き・樽引(たるひ)き神事」が行われた。(尾仲由莉) 【写真】氏子たちが力強くたいまつを振り回す「稲引き神事」 神事は市の無形民俗文化財に指定され、子だくさんで食べ物に困った祭神が村から稲束を盗み、そのおわびに酒が入ったたるを置いていったという伝承にちなむ。コロナ禍で中止していたが、昨年4年ぶりに復活。今年は本宮の布団だんじりの巡行も行われ、以前の形を取り戻した。 大祭の中でも、稲引き神事と樽引き神事は氏子青年部が主に担う。近年は高齢化で30~50代が担当しており、氏子総代の小松道一さん(70)は「体力が必要な神事で、私が子どものころは20~30代がやっていた。人集めは年々大変になってきている」と話す。 午後8時半ごろ、太鼓を鳴らす踊り子に先導され、同神社周辺を練り歩いた氏子らが参道に到着。稲束をつるしたてんびん棒を手にした稲持ち役が「エイトー」と叫びながら駆け、他の氏子らが輪になって回り始めた。地面に円を描くようにたいまつの炎が燃え、ぶつかると火の粉が飛んだ。その後、氏子たちは本殿横で酒だるを奪い合い、激しく地面に打ちつけて割ると、神事は幕を閉じた。 踊り子を務めた広野小5年の男児(10)は「お兄ちゃんがやっていて、かっこいいと思って挑戦した。来年は布団だんじりに乗る乗り子をやってみたい」。同じく踊り子役の広野小4年の男児(10)も「太鼓を同じリズムでたたくのが難しかったけど、初めての経験ばかりで楽しかった」と笑顔だった。 小松さんは「珍しい神事でもあり、長くつながれてきた歴史を絶やさないようにしたい」と話していた。