政局が揺らす為替市場 仏下院選、極右政権回避で警戒感和らぐ 米大統領選は見方が錯綜
欧米の選挙が外国為替市場を揺らしている。仏下院選は極右勢力の圧勝が避けられる見通しが強まり、5日の東京外国為替市場は警戒感が和らいだ。4日投開票の英総選挙で14年ぶりの政権交代が確実となったことも追い風となった。ただ、政治情勢は混沌としており、再び材料視されるリスクは残る。今年最大の選挙、米大統領選に関しても投資家の見方が錯綜している。 5日の東京市場ではユーロが対ドルで買われている。極右政権の誕生が回避される可能性が高まり、バラマキによる財政悪化懸念が後退したためだが、場合によっては暫定政権が樹立され、1年後に再び選挙を行う余地もある。 第一生命経済研究所の田中理首席エコノミストは「フランスは財政再建が進まず、政局不透明感と政策停滞は長期化する」と警戒する。 5日はポンドもドルに対して上昇した。英国では市場の織り込み通り、政権交代が実現する見通しとなった。背景には、勝利を確実にした労働党が歳出改革に取り組む方針を掲げていることや欧州連合(EU)との関係改善期待がある。 田中氏は「非関税障壁の軽減などEUとの交渉は時間がかかる」として、期待が急速にしぼむリスクを指摘する。 一方、ドルは米大統領選の不透明な情勢を反映し、方向感を失いかけている。対ドル円相場の5日午後5時時点は1ドル=160円台後半。 バイデン大統領が選挙戦を撤退する「もしバイ」、トランプ前大統領が復帰する「もしトラ」のシナリオを巡り、投資家は頭の体操をしている段階だ。 トランプ氏再選の場合は法人減税強化や対中関税引き上げ、移民政策強化などの政策を打ち出すことが予想される。トランプ氏の政策がまだ見えないだけに、為替にどう影響するか見方は固まっていない。 ただ、円安による物価高に直面する日本にとっては、安心材料もありそうだ。エコノミストの豊島逸夫氏は「今後は財政赤字の拡大がより意識される」と予想。「円安ドル高一辺倒ではなくなり、円安の宴も間もなく終わりを告げる」との見立てを示す。(米沢文)