悪意のある編集で「のぞき魔」「いやらしい男」に仕立てられる…TikTokで勝手に顔をさらされた人たちの悲鳴
通常の出来事であれば、メンバーは女性の反応を不思議に思うことはあれど、さして気に留めなかったかもしれない。だが、この様子は同じくタイムズスクエアを訪れていた無関係の人物によって無断で撮影され、TikTokに投稿された。動画は運営側が削除するまでの間に40万回以上再生され、コメント欄では女性の反応を批判する声が相次いだ。触れられるのを嫌がった女性が白人で、ハイタッチを求めたメンバーが黒人だったことから、人種差別的な態度だとの非難が集中した。 ■動画配信者の「小遣い稼ぎ」の犠牲者になった 事態を重く見た女性の姉は、TikTokに説明動画を投稿。妹は自閉症と闘っており、見知らぬ人から触れられたことで強い拒否反応を見せたのは、強迫性障害が原因だったと説明した。この説明動画の再生回数は450万回に達している。姉が説明しなければ、妹は人種差別主義者のレッテルを貼られるところであった。 マッシャブルは、TikTokでは動画の視聴回数1000回につき、2~4ドルの収益が発生する仕組みだと説明している。事情を知らない通りすがりの人間が他人のやりとりを動画で切り取り、実情と異なる正義を振りかざした挙げ句、コンテンツとして無断で収益化する例が後を絶たない。TikTokの知的財産権に関する方針では、「投稿内容についてはユーザーが責任を負う」と定められているものの、無断撮影動画の投稿を制限する具体的な規定は設けられていないのが実情だ。 マッシャブルは、ソーシャルメディアとスマートフォンの普及に伴い、公共の場で見知らぬ人に無断撮影され、ネットに投稿されることが日常茶飯事となったと指摘している。「公共の場で見知らぬ他人を撮影することが、いつから許されるようになったのだろうか?」と記事は問題提起する。 ■ジムでのワークアウト撮影でトラブルに ニューヨークのような観光名所に行かずとも、日常生活を送るなかで、あらゆる人々が所構わず動画を回している。うっかり映り込んでしまうことは、もはや避けがたくなってきた。米デジタルメディアのヴァイスが問題視するのは、ジムでの撮影をめぐるトラブル事例だ。 記事によると、ある女性配信者がTikTokに投稿した映像が物議を醸したという。この配信者は、ジムで撮影した動画内を通じ、「ある男性が自分をいやらしく見つめてきた」と主張。しかし、視聴者らが実際の映像を子細に確認すると、その男性はただジム内を見回しており、撮影機材を設置していたこの配信者の方を一瞬見ただけだった。それにもかかわらず、配信者は男性を「野蛮」「くだらないクズ」などと非難。この動画は後に削除されている。 悪質な事例はまだある。ある若いボディービルダーはジム施設内で、高齢の利用者が汗を拭う様子を無断で撮影。「自分がポーズを決めている後ろで、おっさんが口を拭いている」と揶揄するコメントを添えて投稿した。ジムでは誰もが必死で汗を流しており、容姿にまで気が回らない瞬間も多い。話題作りや収益化のため、トレーニングに励む利用者を出しにする不適切な動画となった。