【知事会の人口戦略】先導的役割に期待(8月24日)
人口減少対策に焦点を当てた政府の「地方創生」の成果が問われる中、全国知事会は先の会議で人口戦略対策本部を設置した。地方の未来に対する危機感の高まりを受け、全知事が結束した。課題解決の先導的役割を果たし、少子化や東京一極集中の流れを食い止めてほしい。 地方創生は2014(平成26)年、当時の安倍政権によって本格始動した。流入超過の東京圏の人口を企業の地方移転などを通して分散しようと試みたが、現状は10年前よりも悪化している。昨年の全国出生数は統計開始以来の最少に落ち込み、2100年までに日本の総人口は半減するとの推計もある。政府は「大きな流れを変えるに至っていない」との検証結果を公表したが、第三者的な総括にとどまり、看板政策は手詰まり感が否めない。 知事会は戦略本部設置に合わせた緊急宣言で、地方創生の取り組みは「国全体で集中して施策を投入できていなかった」と厳しく評価した。その上で、組織や体制を整え、地方と協力しながら必要な政策を重点的に展開するよう国に求めた。交付金の権限など主導権は握りつつ、効果的な施策を打ち出せない国への不満の表れと言える。
全知事で構成する戦略本部は定期的な会合などを通して課題を検証し、経済界や国民と一体となった対策を提言していくとしている。国への要請活動にとどまらず、現場の知見を共有し、実効性のある施策を展開するなど主体的な行動にも期待したい。 定住人口の確保に向けた奪い合いが地方で激化しているとの指摘がある。地域の活力維持に向け、移住などで人口を安定させる取り組みは重要だ。ただ、地方から別の地方に移り住む例も少なくなく、自治体間での格差の広がりを懸念する声も出ている。総人口には限りがあり、出生数を増やす施策も一層重視する必要がある。 知事会の研究会は、少子化の最大の原因に婚姻数の減少を挙げている。未婚者の7割が結婚を望みつつ、出会う機会の少なさや経済的理由で婚姻できない現状が本県の調査で浮かび上がった。こうした傾向は全国共通の課題であり、今こそ国と自治体が連携し、対策を強力に進めなくてはならない。(角田守良)