海外も注目の17歳スプリンター、桐生が世陸で学んだもの
楽しく走れた
世界陸上最終日男子4×100mリレー。17歳の桐生祥秀は2レーンだった予選は他の国に負けない走りで流れを作り、38秒23での全体の5位通過に貢献。約2時間後の決勝ではレーン紹介のカメラが回って来るまでに考えたと言うパフォーマンスも披露して、日本チーム6位入賞への口火を切る走りをした。 「100mの時はガチガチになった部分もあって落ち着いていなかったんで、リレーは落ち着いていって先輩方にバトンを託すだけだと思っていました。予選、決勝ともに遅れないで行けたし、楽しく走れました」 登場したのは大会初日の100m予選と、最終日のリレー。 「その間はすごく長かったけど、終わってみれば一瞬でした」というが、最初の100mでは100分の1秒だけ敗れて準決勝進出を逃すという、これまで国内のレースでは味わっていないような悔しさも味わった。そんな悔しさもリレーの決勝の場も、貴重な経験だったのだ。 「今年は織田記念も日本選手権も始めてだったし、バーミンガムも世界陸上も初めてのこと。その中でダイヤモンドリーグで10秒5だったタイムも世界陸上では10秒3に上げられたので、そこはもっともっと海外の選手と走って経験を積んでいくうちに、強さがもっと身についてくればいいなと思っています」
海外メディアも注目
100m予選の後には、ミックスゾーンへ戻る途中に海外のテレビ局からも呼び止められた。本人は「ウサイン・ボルトとか何か言われたけど、何を聞かれているのかわからないので、ジェスチャーで答えておきました」と笑う。そして「予選落ちでまさか止められるとは思っていなかったけど、『これからどうなるかな』という興味もあるのだと思うので…。そこはしっかり、期待に応えられるような走りが出来るようになりたいと思います」と話すのだ。 17歳で10秒01を出したニュースには、海外メディアも興味を示したという。フランス在住の陸上競技に詳しい日本人カメラマンの元には、ノルウェーとイタリア、そしてフランスの新聞社から取材依頼もきたという。さらにフランスの新聞社のレキップは、京都まで取材に出かけたというのだ。 そんな興味の現れが、6月末のダイヤモンドリーグ・バーミンガム大会への招待だった。そこでは出場選手中最下位の15位に終わって若干興味を薄れさせたが、今回の世界陸上予選を10秒31で走り0秒01差で準決勝進出を逃した走りを見て、海外のメディアも「これは力を持っている」と認め直したのだ。それが海外のメディアが、桐生に声をかけた理由でもあった。 「去年ジュニアで活躍していたイギリスのアダム・ジェミニリ選手が今年は200mで19秒台を出して決勝へ進出していたので、それを見習いたいというか、このままで満足しては行けないと思ったし、今度彼と100mを走るなら絶対に負けたくないと思いました。今は17歳だけど、2年後の世界陸上は19歳で大人になるから、しっかり準決勝で走れる選手になりたいと思います」と話す桐生。彼は世界陸上の3本のレースで、数多くの収穫を得て日本へ帰る。 (文責・折山淑美/スポーツライター)