「『トー横』は若者にとって匿名性が担保される場所」心理学者、どう考える?
「我が子が犯罪に巻き込まれたら」 ニュースで子どもの非行が報道される度に不安を覚える親は多い。特に「トー横キッズ」は、社会問題として注目されている。 【グラフ】若者に浸透する大麻。だが薬物が大麻だけで終わらないケースも 犯罪心理学者として多くの非行少年少女と向き合ってきた出口保行さんに、若者が「トー横」に集う理由と、子どもが薬物をはじめとする犯罪に関わってしまうきっかけを聞いた。 (本稿はシンクロLive「犯罪心理学者に聞く「つい怒鳴ってしまう」子どもの将来への影響は?」(90分)の一部を記事化したものです) (話し手・出口保行) ■ なぜ居場所のない子どもたちは「トー横」に集まるのか? 最近、メディアでよく取り上げられている“トー横キッズ”の問題。私もよく新聞やニュース番組などから取材を受けるようになりました。 いじめや虐待から逃れるための居場所を探して、新宿の歌舞伎町に子どもたちが集まり、性暴力や薬物依存などのトラブルが発生しています。 この現象は今に始まったことではありません。 私は、かつて日本各地の少年鑑別所に勤務していましたが、どこの地域にも“トー横”的な場所が必ずありました。 家庭や学校に自分の居場所がない子どもたちが、自分にとって居心地のいい場所を求めて、ひとつのエリアに自然と集まってくる。そして、みんなで肩を寄せ合って生きていくという現象は、いつの時代のどんな地域でもあることなんです。 では、なぜ彼らはトー横に居心地の良さを感じるのか。 それは、匿名性が担保されているからです。 学校などのコミュニティでは、自分の名前とか学力といった情報が、他の生徒や教員にすべて知られてしまいます。 一方で、トー横のような場所では、自分がどんな人でなにをしているのかを他人に伝える必要がないので、自分が誰か知られてしまうリスクはありません。 仮に自分の名前を言ったとしても、それが嘘か本当か他人が知る術は限られています。そこに、子どもたちは気楽さを感じているのだと思います。 家庭や学校のように、自分という人間をさらけ出さなくても、どこかに自分の居場所がある。だからこそ、行く場所を失った子どもたちは、トー横に集まるのではないでしょうか。