あの名曲に原曲があった! ニール・セダカが『Zガンダム』に曲を提供した理由とは?
なぜニール・セダカはこの曲を選んだのか?
「Better Days Are Coming」は、ビートルズなどの登場によって低迷したニール・セダカ氏がイギリスに拠点を移して発表したアルバムの中の1曲で、後にロックバンド10ccを結成するメンバーが演奏を務めています。このアルバムは高い評価を得て、彼の復活への足がかりとなりました。パーカッションが印象的なノリのいい曲で、熱さを帯びた「Z・刻を超えて」によく合っています。 「Bad and Beautiful」は、1970年代半ばにアメリカで大復活を遂げた第二の全盛期に発表された曲で、とても繊細で美しいメロディーとサウンドが印象的な曲です。グッとアップテンポにアレンジされ「星空のBelieve」となりました。 どちらの曲もシングル曲でもカップリング曲でもなく、カバーされることが多かったニール・セダカ氏の曲でありながら誰にもカバーされていませんでした。つまりニール・セダカ氏は、自信があって、なおかつあまり知られていない曲を選んで提供したことがわかります。世界で愛されたシンガーソングライターは、日本からやってきたアニメ監督にも真摯に向き合っていたのです。 その後、富野監督はキングレコードのディレクターだった大場龍夫さんとともに再び渡米し、ニール・セダカ氏と『Zガンダム』のビデオを見ながら2時間半に及ぶミーティングを行います。今度は未発表のストックから曲が提供され、売野雅勇さんが歌詞をつけて後期オープニング曲の「水の星へ愛をこめて」が誕生しました。大場さんは自らスカウトした森口博子さんにこの曲を託し、今も愛される名曲となりました。なお、森口さんがオーディションなどで愛唱していた「ボーイ・ハント」は、ニール・セダカ氏の代表曲です。 ポップス界の超大物が海を超えて日本のアニメに楽曲を提供したのは、ポップスの作詞家、作曲家に曲を発注するようになった80年代のアニメソングをめぐる大きな潮流が深く関係していました。そして富野監督の熱意と、それに応えたニール・セダカ氏の人柄と抜群のポップセンスがアニメソングの名曲を生んだのです。
大山くまお