たった5人で挑んだ全国大会 退場で1人減っても戦い抜いた和歌山南陵、敵将の心も震わせた40分間【ウインターカップ】
クラウドファンディングでは763万円もの支援が集まった
客席に向かって一礼する5人には「南陵かっこいいぞー!」と涙目の保護者たちから温かい声援が飛んだ。藤山は「この1年、しんどいという話をたくさん聞いてくれた」と感謝。「応援してくれた人たちに情けない姿を見せるわけにはいかない」と奮起した。遠征費用を確保するために酒井の母親らが始めたクラウドファンディングでは、目標の50万円を大きく上回る763万円もの支援が集まった。 額はもちろん、寄せられた応援コメントが胸に響いた。「大変だね」という同情ばかりではなく、インターハイ後には「6人でも勝った南陵すごい」という声が届いた。「人数は関係ないんだというのをしっかり見て、感じてくださったら嬉しい」と藤山。「ここに来られたのも支援があったから。本当にそういう方達に恩返ししようという気持ちが一番強かった」。感謝の想いをコートにぶつけた。 思い望んだ3年間では決してなかった。だが、過酷な環境だったからこそ成長できたのも間違いない。藤山は「他の高校3年生では味わえない特別な経験ができたと思うし、学べることも多かった」と回顧。「自分たちの実力で(注目度が)上がったわけじゃない。天狗にならないように。いつも謙虚に」。インターハイ後、和中裕輔監督から毎日聞かされた教えを徹底し、再び全国の舞台に立った。 「かけがえのない仲間と出会えたことが一番嬉しかった」という藤山。中村允飛(3年)も「この5人で一緒に戦えて、本当に人生のいい思い出になった」と声を揃える。紺野は「成長のある3年間。僕が凄く落ち込んだ時に、この5人と監督さんが励ましてくれてとても感謝している」と礼を述べた。 主将の二宮は「3年間しんどいことをずっと耐えてきて、最後にこういう晴れ舞台でできたので凄く嬉しい」と総括。酒井は「東京体育館でこのチームメート5人と監督さんでコートに立てた。1年生の頃はやめたいと思ったが、やっぱり今は本当に南陵にいて良かったと思っている」と言い切った。困難な状況を言い訳にせず、最後まで全力を尽くした5人の3年生。その姿は確かに格好良かった。
THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku