ヒコロヒーが語る、挑戦を続ける意味 「じっとしてたら誰にも出会えてなかった」
春が訪れ、“新たな環境への一歩”を踏み出す人が増えているこの季節。これまで小さな池を出たことがないカモの家族が、人生初の大きな冒険に踏み出す様子を描く『FLY!/フライ!』が3月15日より公開中だ。 【写真】ヒコロヒー撮り下ろしカットほか場面写真(複数あり) 本作は、『ミニオンズ』や『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』で知られるイルミネーションによる長編アニメーション。鳥たちの視点から語られる冒険の楽しさだけでなく、人間ドラマにも似たキャラクターたちの成長が観る者を物語へ引き込む。ニューヨークの不良ハト集団のリーダー・チャンプ役として、声の出演を務めたヒコロヒーは、「選んで、決断して、挑戦して……それができる人にしか観られない景色がたくさんあることを感じさせられる映画でした」と語る。 映画やドラマ、書評の執筆と多方面で活躍する彼女に、初めて海外映画の吹き替えに挑戦した感想やこれまでに経験した旅にまつわるエピソード、作品の見どころなどを聞いた。 ■「プライドと誇りを持っている」チャンプの魅力 ーー今回アフレコはお1人で収録されたと聞いていますが、改めて他のキャストの声が入って完成した映像を観た時の感想から聞かせてください。 ヒコロヒー:自分が出ていることは関係なく、いい映画だなっていうことがまず何より1番最初に思いました。映画自体が本当に素晴らしかったです。 ーーご自身のInstagramで「軽やかなのに身につまされる」映画だと書かれていましたね。どの部分にそう感じましたか? ヒコロヒー:年代問わず、子どもも大人も楽しんでいただく。そういう普通に楽しく朗らかに観ることもできながら、 その時観てる方の状況とか置かれてる環境とかによっては何か感じるものも多いんじゃないかなと思ったんです。家族であったり、兄弟であったりというテーマもありつつ、映画のコピーの「じっとしていたら“はじめて”と出会えない」が本当にこの映画をそのまま表現しているというか。選んで、決断して、挑戦して……それができる人にしか観られない景色がたくさんあることを感じさせられる映画でした。 ーーマック率いるカモの家族を初め、さまざまな鳥たちが登場しますが、ヒコロヒーさんのお気に入りのキャラクターはいましたか? ヒコロヒー:私は自分がやらせていただいた、鳩のチャンプが好きです。チャンプって、映画に出てくる鳥の中でも多分体の大きさとしては1番小さい存在なんですけど、自分のやってることにプライドと誇りを持っているんですよね。そこが好きです。 ーー監督からの印象的なディレクションはありましたか? ヒコロヒー:特に声の表現について、大きく指示があった部分はなかったですね。ただ、やっぱりチャンプは周りの鳥よりも小さいので、マックスたちは自分よりも大きいからこそ、声を張ってセリフを言うとか。その辺りはアドバイスをいただきながら、やらせていただきました。 ーーヒコロヒーさんは以前アニメ『ぼさにまる』のキャシー役も演じられていましたね。 ヒコロヒー:ボサニマルのキャシー役は、初めて声優としてアニメのアフレコをした役だったので、「(ヒコロヒー)らしくやってください」って言ってくださったんです。キャラクターもね、緩くて(笑)。ただチャンプは、もう少しキャラクターをつけてやろうという意識はありました。 ーー同じく「演じる」お仕事として、ヒコロヒーさんはドラマや映画にも多数出演されています。2作品のアフレコをやってみて、声の演技の面白さについて感じたことはありますか? ヒコロヒー:ドラマや映画だと、私の体ごと(映像に)出ちゃうじゃないですか。もちろん知らない方もいらっしゃるとは思うのですが、知ってくださっている方にも演じている役としてどうみていただくのか。反対に声の仕事だと顔が出ないので、今回の『FLY!/フライ!』でも、「途中まで本当誰がやってるかわかんなかった」と言っていただいたりして。そういう、演者の存在をちらつかせないところが、声の演技の面白い部分なのかなと思います。 ■「芸人になったことが、とにかく1番大きな一歩だった」 ーー『FLY!/フライ!』ではジャマイカを目指すマックたちが、さまざまな場所へ旅をするところが大きな魅力になっています。ヒコロヒーさんはnoteでも北ヨーロッパへ旅行について綴られたり、番組でルート66を訪れる旅にも行っていましたが、これまでの旅で訪れた場所で印象的だった場所と理由を教えてください。 ヒコロヒー:海外だと……エストニアに向かう船の旅がよかったですね。ヨーロッパの北東の方にある国なんですけど、フィンランドのヘルシンキから、船でバルト海上を通っていくんです。そもそも、海が日本とは全く違う色なんですよ。あとは、船の上でもタバコ吸い放題(笑)。おおらかな雰囲気があって、ちょうど季節も夏だったので、船の上の風が気持ちよくて。いい旅でしたね。 ーー最高ですね。旅の中で「冒険したな」と思うエピソードはありますか? ヒコロヒー:冒険っていうほどではないんですけど……インドに行った時は、スラれそうになるし、子供がおちょくってくるし、ちょっとヒヤッとした瞬間はありました。とはいえ「大変な部分がある」ってこっちが思うのが、厚かましいことですからね。国の違いを感じさせていただいたなと思います。 ーー今後行ってみたい国はありますか? ヒコロヒー:アムステルダム。あとは映画のマックたちと同じく、ジャマイカに行きたいですね。 ーー『FLY!/フライ!』は、勇気を出して一歩踏み出すことの大切さを描いていますが、ヒコロヒーさんが現在に至るまでに「あの時勇気を出して一歩踏み出してよかった」と感じているのはいつですか? ヒコロヒー:やっぱり芸人になったことが、とにかく1番大きな一歩だったと思います。本当にじっとしてたら誰にも出会えてなかったんだろうな、と思います。 ーー芸歴13年ともなると、「続ける大変さ」を感じた瞬間もあるのではないでしょうか? ヒコロヒー:やりたいことをやり続けるって、もちろん楽じゃないことの方が多い。でも挑戦してみることが、常に1番価値のあることかなと思います。勇気があったりなかったり、その人によってもいろいろ事情もあるだろうとは思うんですけど。先の評価とか成功とか名誉よりも、まずはやってみる。そこでの経験や出会いが、最も意味があるものだと思っています。 ーー最後に映画『FLY!/フライ!』はどんな人に観てほしいですか? ヒコロヒー:年代問わずいろんな方に楽しんでいただけると思うので、みんなに観てほしい想いはあります。臆病なタイプや前向きにやってみるタイプまで、いろんな種類のキャラクターがいるので、誰かに重ねながら観ていただけるはずです。春は新しいことが始まる時期でもあるので、新しい環境に行こうとしてる人とか、ちょっと不安がある人に、「意外とやってみたら楽しめるかもしれない」と思ってもらえたらいいですね。不安ばっかりで楽しむ余裕がないときに、少し視野を広げてくれるような映画だと思います。
すなくじら