情報システム担当部署には「怪談」があふれている! プロ怪談師が本当にあった危機事例を語るイベント「情シスだけが怖い話」開催!
■「頑張ってくれたね。もういいから...」 怪談師・伊山さんが聞いた別の話。小田さん(仮名)は、部長のA子と2人で、食品メーカーの情シス担当として働いていた。そんなある日、小田さんの会社の社長がライバル社に高待遇で転職した。そしてそれ以降、卸売業者からの買い付けをライバル社が先取りし、小田さんの会社から仕入れができなくなってしまっていた。どうやら内部の情報がリークされている可能性が高いという。 A子部長は小田さんに、極秘で内部リークの犯人を突き止める任務を命じた。空調の効いた寒いサーバールームにこもり、元社長や社員のログを調べ続ける日々が始まった。しかし、いくら調べても怪しい情報は出てこない。5日間徹底的に調査しても手がかりはゼロ。結果をA子部長に報告すると、彼女は「頑張ってくれたね。もういいから」と優しく声をかけてくれたという。 けれども、小田さんは諦めたくなかった。何かが引っかかっていた。全社員のログを調べることを決意し、徹底的に調査を続けた。そうして膨大な「機密」とついたファイルを何万件も調べていく中であることに気付く。A子部長のログが全くないのだ。これが怪しい。 この疑念を確かめるためにさらに調査を進めたかった小田さんだったが、12連勤の疲れから体調を崩し、医師の指示で2週間の休養を取ることになった。A子部長は「本当に頑張ってくれたね」と優しく声をかけてくれた。しかし、小田さんの体調は予想よりも早く回復したため、1週間で復職することにした。 復職後、誰にも会わないようにサーバールームに直行し、再びA子部長のログを探り始めた小田さん。そして、小田さんが休んでいる間に、A子部長が社内の機密情報をダウンロードし、個人のクラウドサービスにアップロードしていた形跡が見つかった。やはり黒幕は彼女だった。小田さんはこの情報を取締役に報告し、ライバル社に転職をした元社長は逮捕、A子部長は解雇された。 この功績を評価され、小田さんは部長に昇進することが決まった。人事部長から「部長昇進おめでとう」と祝福の言葉を受けたが、その後に続けてこう言われた。「でもね、危なかったよ。もし君が1週間で戻ってこなかったら、君自身を徹底的に調査する予定だったんだ。なぜなら、A子さんがずっとサーバールームにこもっている君のことを怪しいと言っていたからさ」 実はA子部長と転職した元社長は愛人関係にあり、情報をリークしていたのだったという。一連の騒動で人間不信になっていた小田さんのもとに、ある日、一通の封筒が届く。差出人はあのライバル会社から。中には、ヘッドハンティングのオファーが書かれた手紙がそっと挟まっていたのだった。 *** 実話に基づいた「ケーススタディ怪談」はいかがだっただろうか。イベントではこの他にも背筋も凍るような怪談が披露されたり、パネルで展示されたり、フォトスポットが設置されたりと情シスの皆様に大盛況。また「情シスの人だけの懇親会」も行われ、「情シスあるある」が語り交わされた。みなさんも、あまり情シスの人たちを怒らせないようにしましょうね。本当に恐ろしいことが起きますよ...。 取材・文/ゆん 撮影/山添 太