なぜ?オリックス戦力外通告から1年、DeNAのCSキーマンのひとりに “ハマのサブマリン”がセ・リーグで輝いた理由とは
DeNA・中川颯投手(26)が、自身初のポストシーズンに闘志を燃やしている。昨年10月にオリックスから戦力外通告を受け、DeNAに移籍。今季は貴重な下手投げ右腕として、先発、リリーフに輝きを放った。12日から始まるCSで、ブルペンのキーマンのひとりに挙げられる“ハマのサブマリン”に迫った。 【写真】自身初のポストシーズンに闘志を燃やす中川颯 リリースの瞬間は地面スレスレ 球界で“絶滅危惧種”ともいわれるアンダースロー。地面スレスレのリリースポイントから独特の軌道を描くボールで打者を翻弄(ほんろう)する。シーズン当初は先発、後半戦からはリリーフとして稼働。29試合登板で3勝0敗1セーブの数字を残し、イニング途中での火消しはもちろん、回またぎもこなすフル回転でCS進出に貢献した。 昨年の戦力外通告から1年。オリックスでの1軍登板は3年間でわずか1試合にとどまり、パ・リーグ3連覇の輪に加わることはできなかった。「悔しかったですね。あれから1年後、こうして1軍の舞台にいられるというのは頑張って良かったなと思うし、CSで少しでも貢献できるようにしっかり準備して、悔いのないようにやりたいと思います」と静かに闘志をにじませた。 小杉投手コーチはそんな右腕について「セ・リーグであれだけ地面に近いアングルから投げる投手はいなかったので、すごく貴重な存在だし、ブルペンにも厚みが出る」と評する。また「先発の時はゴロ率が高かったですが、リリーフだと奪三振が増えている。もともとオリックスでもパワーピッチングで三振を取っていたスタイルだったので、もう一回戻そうと」と救援に配置転換。後半戦から本来の投球スタイルに変えたのも奏功した。 中川が最も真骨頂を発揮したのは、イニング途中からの火消しだ。小杉コーチは「回の途中で行く投手には、三振を取れる投手が絶対に必要な条件。アングルを変えてアクセントを付けていくという意味で彼の存在はすごく重要。キーマンといってもいい」とCS突破のカギを握る投手のひとりに挙げる。ファーストSで激突する阪神との今季対戦成績は防御率8・16だが「短期決戦ではシーズンの数字というより、場面場面でどういうロジック(論理)で戦っていくかというところが大事」と期待を込めた。 中川は「アンダースローは球速も出ないし、数字に表れないところがすごく大事になってくる」と間合いや駆け引きの重要性を口にする。その上で「8割の力で10割のボールが行くように。10割の力で10割だと、バッターから見られやすいので打たれやすい。打ち取ってもヒットゾーンに飛んだりする」と対打者へのスタンスを明かした。 「1軍のマウンドに立ちたいって気持ちが大きかった。その初心はずっとどんな場面でも持つようにしていた。そのマインドを変わらず持つことで、いいパフォーマンスが出せていたと思う」。チームは2017年に3位から日本シリーズに進出した奇跡の再現を目指す。自身の生きざまとも重なる下克上。大舞台への渇望が、自らを奮い立たせる。(デイリースポーツ・福岡香奈) ◆中川 颯(なかがわ・はやて)1998年10月10日生まれ。神奈川県出身。桐光学園-立大を経て、2020年度ドラフト4位でオリックスに入団。昨季限りで戦力外となり、昨オフにDeNAに移籍。今季は29試合に登板し、3勝0敗1セーブ、防御率4・42。5月18日の中日戦ではプロ初本塁打をマークした。184センチ、80キロ。右投げ左打ち。