ダンサー・TAKAHIRO「人生を変えたのは、アメリカ行きの飛行機に乗ったこと」 世界的活躍へのきっかけ【オリコン ライターズ】
■「なにも自信が持てるものがなかった」ダンスはじめたきっかけ
日本のダンス競技人口は2015年の時点で約600万人で、2025年には1100万人に達するといわれる(「一般社団法人ストリートダンス協会」による推計)。言語を超えた世界共通の表現として人気が高まっているが、TAKAHIROがダンスを始めたきっかけは、あるテレビ番組だったという。 「高校生のときです。当時、厳しい学校に通っていたのですが、自分は勉強も運動もなにも自信が持てるものがありませんでした。心のなかで、『一回でもいいから、自分のことをすごいと思ってみたい』、そんな思いだけを抱いていました。そのとき、テレビで風見しんごさんが踊っているのを見たんです。『すごい! 自分とは全然違う!』。衝撃を受けました。そして、『もし、こんなふうに踊れるようになったら、自分のことをすごいと思えるんじゃないか』と、ためしにテレビの前でターンしたら、転んでしまいました。でも、なぜかそれがたまらなく面白くて。そうして、その日から一日中ダンスのことを考えるようになりました。どうやら、この世界にはルールはないらしい。なんでも自分が思ったようにやればいいらしい。学校では『〇〇しなさい』と言われるけれど、ダンスの世界では『○○しよう』は自分で作っていくものらしい。なんて自由なんだと没頭して、気がついたらこんな年齢になっていました(笑)」 そんな無我夢中のダンス人生において、ターニングポイントとなったのは、大学卒業後に渡米し、アポロシアターに挑戦したことだ。 「跳ね返されても、馬鹿にされてもいいから、一回だけ世界のトップで勝負したい。そうした思いが捨てきれず、マイケル・ジャクソンやスティーヴィー・ワンダーを輩出したアポロシアターのステージに上がりました。そのとき、まさか優勝できるなんて思っていませんでした。でも優勝できて、次も優勝して、次も優勝して――実際に飛び込んでみると、『なんとかこの世界でサヴァイヴしたい』という思いが芽生えてくるんです。必死になるんです。それまでの自分にはなにもなかったけれど、人生を変えたのは、アメリカ行きの飛行機に乗ったことです」 テレビの前で転んだ、なにもなかった18歳の青年は、8年後に「世界が尊敬する日本人100」に選出される世界的ダンサー・振付家になっていた。 「だから、みなさんにはまず自分の好きをふくらませていってほしい。『THE DANCE DAY』を見たら、いろんな“楽しかった”に出会うと思います。音楽、身体性、技術、表現……人それぞれの“楽しいの種”が散りばめられています。それを育てていってください。自分で踊ってみてもいいし、踊らなくてもいい。“楽しい”が見つかれば、そこからは自分だけの自由です」 そう語るTAKAHIROにとってのダンスとは、「生命の主張」だという。 「人間が一番最初に学ぶのは『リズム』です。心臓の鼓動であり、呼吸のリズム。そのリズムに乗せてなにかを表現するならば、そこには自然とメッセージが込められます。たとえば、地面という抑圧から離れて天にコネクトしようとつま先を上げたのがクラシックバレエであり、人間のなかにも答えがあると逆に地面と触れ合うようになったのがコンテンポラリーダンス。人と人のコミュニケーションとして社交ダンスが生まれ、争いをおさめるために生まれたのがブレイクダンス。つまり、生命のリズムがあり、そこになにかの主張が込められてダンスは生まれる。だから、ダンスとは『生命の主張』なんです」 『THE DANCE DAY』で繰り広げられるさまざまな“生命の主張”から、ぜひ自分の“楽しいの種”を見つけてもらいたい。 (取材・文/マイティ・M) ※取材の模様は、26日放送の『ライターズ!』(日本テレビ 日曜深1:30)でもご覧いただけます。