FIFA汚職、イタリアは02年W杯を蒸し返す?
疑念は永遠に消えず
イタリア戦、そして韓国がベスト4進出を決めた準々決勝のスペイン戦での不可解な判定が間違いだったことは、FIFAも後に認めている。FIFA創立100周年を記念して発売されたDVDで、「世紀の10大誤審」に含まれたからだ。イタリア戦とスペイン戦で2つずつ、計4つのジャッジが少なくとも誤りだったのである。 筆者も、これらの誤審に疑念を抱いていることは否定しない。モレノ氏がいわくつきの人物であることも事実だ。本人は正当性を強調しているが、母国エクアドルのサッカー連盟から資格停止処分を科され、FIFAからも除名され、引退後には麻薬所持でアメリカ当局に逮捕までされた人物だけに、発言に信ぴょう性は感じられない。 だがそれでも、誤審と八百長は違う。『コッリエレ』は、あくまでも“被害者”としての立場から主観的に八百長と断じているのであり、客観的な証拠が出てきたわけではない。「八百長があった」と事実にすることはできないのだ。当事者が認めない限り、おそらく真実は永遠に闇の中だろう。
イタリアが気にするのは目の前の決戦
実際、イタリアメディアも連日のようにFIFAの腐敗を糾弾してはいるが、今回のFIFAスキャンダルを02年W杯に関連付けて大々的に報じているメディアはほとんど見られない。インターネット系メディアも、『コッリエレ』紙におけるラヌッチ氏の発言を伝えている程度だ。 一般のイタリア人サッカーファンも同じだ。少なくとも、筆者の知人に、02年W杯の一件を騒ぐファンはいない。FIFAの不正に憤り、辞任を表明したゼップ・ブラッター会長をこきおろしはしても、今の彼らが何より気にしているのは、ユヴェントスがバルセロナと対戦するチャンピオンズリーグ決勝なのだ。 今回のFIFAスキャンダルで、韓国戦における誤審を八百長とイコールで結ぶのは、いささかオーバーというものだろう。繰り返すが、イタリアのサッカーファンがモレノ氏の名前を忘れることはない。2006年W杯で優勝した際にトロフィーを授与しなかったブラッター会長への憎しみも小さくない。ゆえに、万が一、新たな証言や証拠が明るみになれば、その時は声高に叫ぶに違いないが…。