世界遺産倒壊で観光業に打撃も ネパール経済は大丈夫か? 横山謙一
どう立て直すか
今後の段取りとしては、現在ネパール政府と関係援助機関により緊急復興計画が6月中旬を目処に策定されつつあり、その後6月下旬には関係援助国会合の開催により復興支援の方向が定められ、個々の復興プロジェクトの実施に移されていく予定です。復興計画の規模は崩壊した家屋や文化遺産を中心に少なくとも2.4兆円(国内総生産の10%)は必要と見られています。来年度の経済成長見通しは、復興プロジェクトの進展にもよりますが、アジア開発銀行では少なくとも4.5~5%以上の年間経済成長率への回復は可能と予測しております。 観光業では、ネパールの観光資源は一部に大きな被害はあったものの、ヒマラヤ観光など、その価値は普遍的ですので、余震が落ち着けば十分回復が見込めると考えています。地震前には、カトマンズや、アンナプルナ山群への主要観光地であるポカラで外国資本を含む高級ホテルの進出計画が進展していたところです。そうした投資が再開され、高級志向の観光客への広告活動や、より安全なトレッキングルートの確保等、観光業の付加価値を高めていくことにより、年間の観光客数は中・長期的には地震前の80万人から数百万人に増える可能性がありますし、観光収入もそれ以上に大幅に増やすことが可能と考えております。 最貧国でもあるネパールの震災復興と経済発展のためには、今後政府、国民、援助機関等による多大な努力が必要ですが、アジア開発銀行としてもそのための最大限の協力をしていく所存です。 -------------------- 横山謙一(よこやま けんいち) アジア開発銀行ネパール事務所長。1960年川崎市生まれ。スタンフォード大学修士。農林水産省、外務省(在バングラデシュ大使館)を経て1999年よりADBに所属。専門は水資源管理及び開発経済学。