原発「割安」に疑問の声も 事故リスクの低下前提
経済産業省の作業部会は16日、2040年度時点の原発の発電コストが火力発電などと比べて割安になるとの検証結果をまとめた。 電力各社が原発再稼働に向けて巨額の安全対策投資を行い、事故発生リスクが低下することなどを反映した。ただ、海外では原発の建設コストが上振れしており、算定の妥当性を疑問視する声も出ている。 原発のコストには、建設費に加え事故時の賠償や除染などの費用も算入され、事故発生リスクが下がれば関連費用は減る。事故の頻度は、原子炉1基が1年間運転したことを示す「炉・年」を分母として表す。 東京電力福島第1原発事故後の11年にコストを算定した際は、2000炉・年に1回の事故を想定。その後、安全対策を踏まえて4000炉・年とし、さらに今回の検証ではリスクを再評価して1万2000炉・年に下げた。その分、算入する賠償費用などが減少した。 一方、原発の建設費は約7000億円と試算した。21年の前回検証では約6000億円としていたが、資材価格や人件費の高騰、安全対策費用の追加を受けて引き上げた。 もっとも、海外では近年、工事の長期化による人件費の増大などで原発の建設費用が膨張。フランスのフラマンビル原発や米国のボーグル原発では1基当たり2兆円を超えており、日本の想定の低さが際立っている。原子力資料情報室の松久保肇事務局長は「相当の上振れ余地があるのに、(建設費を)安く見せるために下限値を示している」と批判している。