栃木県内でクマ目撃急増 観光地や住宅の付近にも出没 4~5月で34件目撃、2013年度以降最多
栃木県内でクマの目撃件数が急増している。例年は6~8月に増える中、本年度は4~5月の目撃件数が前年同期比15件増の34件で、県の統計で確認できる2013年度以降で最多となったことが4日、県への取材で分かった。このうち5月が30件に上り、これまでの最多件数の2倍を超えた。地域別では日光市が半数超の18件で、観光地や住宅などの付近に出没しており、猟友会が警戒を強める。観光客の増加などで目撃機会が増えたことや、クマの行動範囲が広がった可能性があるとみられ、県などは注意を呼びかけている。 県自然環境課によると、県内にはツキノワグマが推定600頭ほど生息している。一般的に4~5月に冬眠から目覚め、6~8月に目撃件数が多くなる。 今年4月は日光市と鹿沼市で2件ずつ計4件の目撃があった。前年同月より3件少なく平年並みだった。 しかし5月は中旬以降に目撃が相次ぎ、前年同月比18件増の30件に上った。13~23年の5月の目撃件数は平均7・5件。これまで16年と20年の13件が最多だったが、例年の2倍超の目撃が寄せられた。 5月の市町別では日光市16件、那須塩原市8件、那須町と足利市が2件ずつと続いた。那須塩原市塩原では民家、那須町高久乙では道の駅付近、日光市足尾町ではグループホーム敷地内など、人里にも出没した。 同課によると、餌となるドングリの結実は23年度、良好だった。担当者は「本来なら目撃が少ないはず」としつつ、「人目が増えたほか、親離れをした子グマが好奇心で人里に出た可能性がある」と分析する。 出没が相次ぐ日光市では県猟友会日光支部のメンバーがわなを仕掛けており、4日もクマを引き寄せる餌を補充して警戒を強めた。 全国では人的被害も出ている。群馬県安中市では5月末、住宅にクマが入り、2人が重傷を負った。秋田県にかほ市では6月1日、温泉施設近くで男性が襲われけがをした。 県の担当者は「登山やハイキングで山に入る際は、クマと出会わない対策をしてほしい。万が一遭遇したら刺激せずに静かに離れて」と呼びかけている。 環境省によると、出没情報は全国でも4月から増加傾向になっている。