[MOM4892]開志学園JSC FW阿部日夏太(3年)_今大会は怒涛の4戦14発!絶対的エースが延長後半ATにハットトリック達成の勝ち越しPKで「約束のビッグスワン」帰還を引き寄せる!
[高校サッカー・マン・オブ・ザ・マッチ] [11.2 選手権新潟県予選準決勝 日本文理高 3-4(延長) 開志学園JSC高 長岡ニュータウンサッカー場] 【写真】影山優佳さんが撮影した内田篤人氏が「神々しい」「全員惚れてまう」と絶賛の嵐 このチームで3年間積み重ねてきたものには、揺るがぬ自信を持っている。ここまでは思うような自身の結果を叩き出してきたが、すべては次の1試合で躍動するための助走に過ぎない。ビッグスワンで、ファイナルで、絶対にゴールを決める。それがエースの為すべき唯一の仕事だから。 「まずはこの準決勝でハットトリックを達成できたのは、自分自身の成長に繋がるんじゃないかと思いますし、より自信を持って、自分らしく決勝へ向かえるプレーが今日はできたんじゃないかなと思います。インターハイの決勝だったり、去年の選手権の決勝のような大舞台で決められなかったので、あとは決勝で得点を決めるだけですね」。 開志学園JSC高を最前線で牽引し続けてきた絶対的なエースストライカー。FW阿部日夏太(3年=田口フットボールアカデミー出身)が2試合続けて達成した圧巻のハットトリックが、苦しむチームを約束の決勝へと逞しく導いた。 高校選手権新潟県予選準決勝。日本文理高と対峙した一戦は、降り続く雨の中でピッチに水溜まりもできる厳しいコンディション。ある程度割り切った戦い方を選択した開志学園JSCは、シンプルなアタックで立ち上がりからペースを引き寄せ、前半21分にはMF荻原怜大(3年)のゴールで、幸先よく先制点を奪う。 前半33分。左サイドで獲得したCK。キッカーのMF岸田朔太郎(3年)が蹴り入れたボールを、キャプテンのDF松浦朔太郎(3年)が頭で折り返すと、絶妙のポジショニングで待っていた阿部が、こちらもヘディングでボールをゴールへと流し込む。 「コーナーから自分たちの独自の形で入って、ああいうふうに中に入っていくことで、相手もマークの付きづらさは絶対にあったと思いますし、『ゴールを獲りたい』という気持ちを持ちながら、ゴール前で待っていられるところに自分の成長を感じました」。まずは1点目。チームもリードを2点に広げる。 後半35分。同点に追い付かれたばかりの状況にも、メンタルに微塵もブレはない。相手のセットプレーを跳ね返した流れから、FW徳丸祐希(3年)が縦に大きく蹴り出したパスへ諦めずにスプリントした阿部は、飛び出してきたGKより一瞬早くボールをつつくと、がら空きになったゴールへ丁寧にシュートをプッシュする。 「文理はウチと試合をしたことがなかったので、自分がどれだけスピードがあるかは知らないと思って、ここぞというところでスピードを出した結果がああいうゴールに繋がりました。ボールが止まってしまう怖さもあったんですけど、落ち着いてゴールにパスをするイメージでしたね」。これで2点目。チームも再び勝ち越しに成功する。 延長後半10+1分。3-3で迎えた最終盤も最終盤。自らの突破で獲得したPKのスポットに、阿部は迷いなく向かっていく。これを沈めればほとんど勝利が決まる、超重要な局面。いくつもの修羅場を潜り抜けてきた9番を背負うストライカーの心は、不思議なほど落ち着いていた。 「自分たちは練習の最後に全員でPKを蹴っているんですけど、昨日は外しちゃって、『ちょっとヤバいな』とは思っていました(笑)。でも、エースは自信を持って蹴ることで絶対にゴールに繋がると思っていたので、ブレずに『決める!決める!』と言いながら流し込みました」。 ボールがゴールネットへ収まるのを見届けると、雨の中で必死に声援を送り続けてくれた応援団の元へと走り出す。「雨も降っている中で、ああいう大きな声援を送ってくれていることには本当に感謝しかないですし、去年の先輩方も来てくれて、親も来てくれて、その人たちのためにも点を決めたらあっちの方へ行こうと思っていました」。3点目は勝利を手繰り寄せる劇的な決勝点。この重要な一戦で圧巻のハットトリック達成。阿部が培ってきた勝負強さがとにかく際立った。 これで今大会は4試合で14ゴールというハイペースで得点を量産。準々決勝の北越高戦、準決勝の日本文理戦とここ2試合続けてハットトリックを成し遂げるなど、その持てる得点感覚を十二分に発揮しているが、そこには2度に渡って突き付けられた悔しい記憶が、小さくない影響を及ぼしているという。 「去年の選手権の決勝が終わってからも、今年のインターハイの決勝が終わってからも、ゴール前で焦ったりしてしまった部分もあったので、もう1回自分自身のフォワードとしてのプレーを見つめ直して、シュート練習をイチからやった結果が、4試合で14点という結果に繋がっていると思いますし、そこには自分の成長を感じています」。 昨年度の高校選手権県予選と、今年のインターハイ県予選。開志学園JSCは直近の2大会でいずれも決勝まで勝ち上がったものの、ともに帝京長岡高に完敗。阿部自身もゴールを奪うことは叶わず、自身の実力不足を痛感したという。その屈辱の経験から重ねた努力が、高校最後の大会となる今回の選手権予選での爆発に繋がっているというわけだ。 宮本文博監督も「最後まで『絶対1本、絶対1本』と常に狙っている子なので、やっぱりああやって結果を出してくれますし、本当によく練習しているので、神様は見ているという感じですね。彼はもっとこの次のステージに行ってもやると思います」と信頼を寄せるエースストライカーにとって、これが3度目となる新潟ファイナルの舞台。出すべき自身の結果も、チームの結果も、明確過ぎるぐらい明確だ。 「去年はあと一歩のところで惨敗してしまって、何もできなかった自分が本当に悔しかったですし、自分たちは2回も全国の切符を決勝に置き忘れているので、今年の選手権は忘れ物を取りに行くつもりで、ビッグスワンに行きたいと思います。ここまで来たら自分たちが勝つしかないですし、今回の選手権は下克上という目標でやってきて、あとはやるだけなので、今週1週間は全員で集中して、今までにないような最高の準備をして、ビッグスワンで絶対に笑顔になりたいですね」。 ビッグスワンに置いてきた忘れ物は2つある。1つは新潟制覇。もう1つは自らのゴール。開志学園JSCが誇る背番号9のエースストライカー。阿部日夏太が鋭く見つめる視線の先には、もうその2つを引き寄せる未来しか映っていない。 (取材・文 土屋雅史)
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