全世界に響く、人間の善悪について考えさせられる映画『悪は存在しない』【滝藤賢一推薦】
今回は、2024年4月26日公開の映画『悪は存在しない』を取り上げる。 滝藤賢一、中年オヤジにオススメ映画5選
今、自分のやっていることに疑問を持ち、問い続ける
国際的に活躍するとはどういうことなんだろう。世界に通用する作品とはどういうものなんだろう。自分が本当にやりたいことってなんだろう。俳優という仕事の本質はどこにあるのだろう。47歳になり、また新たな壁にぶつかった滝藤は、最近そんなことを考える日々です。 ディズニープラスの真田広之さん主演ドラマ『SHOGUN 将軍』、Netflixで配信されている『幽☆遊☆白書』『忍びの家』、他にも多数、世界で公開されている日本の作品があります。 今回、ご紹介する濱口竜介監督の最新作『悪は存在しない』も2023年のヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞しています。その題材は極めてグローバルにして現代的。世界に向けて作られていると感じられてなりません。 舞台は長野県の山間の自然豊かな村。戦後、移住者が開発したエリアで、今もおいしい湧き水に惹かれて首都圏から転居してくる人が多い。そんな折、山頂エリアにグランピング施設の開発の話が持ち上がり、事業者から村人への説明会が行われる。 今や日本の地方は過疎化という問題を抱えていて、土地に根付いている人にとっては豊かな環境を保ちつつも、人を招いて、村を経済的に潤さないといけない。だからグランピングを企画している会社を悪者にしたり、頑なに、村に来るなと言うのではなく、折り合い点を見つけて、お互いにとってウィンウィンの関係を築きたい。こういう議題が映画で展開することじたい、今、作る意味があるなあと、すごく思います。きっと日本だけの問題じゃないですよね。 滝藤も去年、南アフリカに行きましたが、希少な植物が欲しい人間と、それを提供する現地の人間との葛藤を目の当たりにしました。お金になるからと根こそぎ取りまくるのではなく、自然を守るために妥協点を探り、バランスを考える。南アフリカの大地を守ろうと奮闘する人々は、この映画で自分たちの土地・自然を守ろうとする人々と重なりました。 形は違えど、世界もいろんな問題を抱えている。どの国にも響く作品。そして、今の自分に、それでいいのか? と問いかけてくれる映画です。 『悪は存在しない』 『ドライブ・マイ・カー』の濱口監督が、音楽担当の石橋英子と再タッグを組んだ人間の悪と善の問題を探るドキュメンタリースタイルのドラマ。感情を観客に読み取らせない淡々としたセリフ回しなど、人間模様がサスペンスとして展開する。 2023/日本 監督:濱口竜介 出演:大美賀均、西川 玲ほか 配給:Incline 2024年4月26日よりBunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、K2ほか全国公開 滝藤賢一/Kenichi Takitoh 1976年愛知県生まれ。現在放送しているNHKの連続テレビ小説『虎に翼』に、主人公・寅子の上司役として出演する。