政治家の立て看板 意外と多い「期限切れ」 厳密に言えば公選法違反
街中で見かける政治家の立て看板(立て札)には、小さい「証票」が張られている。ある看板には「平成31年(2019年)6月まで有効」と表記されていた。ということは、期限切れ? 調べてみると、看板を掲げるには選挙管理委員会が交付したこの「証票」を見えやすい位置に付ける必要があり、当然期限も守らないといけない。ほかの看板でも次々と見つかった期限切れ。厳密に言えば、公選法違反だ。一体、どうなっているのか。 【写真】長崎市内に設置されている県議と長崎市議の立て看板。そろって有効期限切れだった 長崎市中心部に近い国道沿い。設置されている国会議員の立て看板は顔写真とともに氏名が記されている。全体的に色あせており、“年代物”の雰囲気を漂わせる。証票の有効期限は「平成31年6月」。5年も経過していた。 同市郊外の幹線道路沿いに掲げられた県議の後援団体用立て看板。証票の期限は「令和5年6月まで」、1年オーバーしている。一緒に掲示されている長崎市議分も2年近く期限を過ぎていた。 長崎、佐世保両市と時津、長与両町で約30カ所の“看板巡り”をした結果、期数を重ねた中堅やベテラン議員にこうした違反状態の看板が目立った。党派による大きな偏りはなかった。 県選挙管理委員会によると、立て看板は、各選挙の候補予定者や後援団体が政治活動に使う事務所前に掲げる目的で設置が認められている。証票の有効期限は最長4年。近年では19、23、27年に期限を迎える証票を交付した。より長く掲示し続ける場合は、再び選管に申請して新しい証票をもらい、張り替えなければならない。 公選法は、政治家1人当たりが設置できる立て看板の上限数を定めている。参院議員(選挙区)、県知事は30枚▽衆院議員(小選挙区)は25枚▽県議、市長、市議は12枚▽町長、町議は8枚-。 日頃から選挙区内で知名度を高めようとする政治家たち。関係者によると、人目に付きやすい駐車場や交差点などで「名前を売る」ため、事務所の実体がない駐車場や畑に立て看板を設置する事例が県内外でみられるという。過去には上限を超えて看板を掲げた例や、証票のない看板も複数あったというから驚きだ。 チェック体制はどうなっているのか。県議や知事、衆院議員(小選挙区)、参院議員(選挙区)分を担当する県選管は、昨年6月末で期限切れとなる証票を交付した政治家や後援団体に対し、昨年6月5日付で更新を促し、申請を受けた場合は新証票を交付した。担当者は「大方対応していただけたはずですが…」と首をかしげる。 ただ、人手の問題などもあり自ら調査などはしておらず、違反の多くが見逃されている。期限切れ看板が多い理由について「新しい証票の張り替え作業を怠っている可能性があるのでは」と推測した。 候補者用の立て看板が期限切れになっている国会議員の秘書は取材に「初当選から後援会などのメンバーが大きく変わっており、中には設置場所を把握できていない看板も残っている」と実情を打ち明ける。更新手続きを進めるため「指摘をいただければ今後、適切に対応していきたい」と話した。 (布谷真基)